人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

クロスオーヴァー~フュージョン

『カメレオン』はハンコックのアルバム「ヘッド・ハンターズ」が初演の代表曲ですね。「ヘッド・ハンターズ」はマイルス・バンドでハンコックの後任ピアニストだったチック・コリアのアルバム「リターン・トゥ・フォエヴァー」や、マイルス・バンドの同僚だったサックスのウェイン・ショーターのグループ、ウェザー・リポート(ジャコ・パストリアス在籍)のアルバム「ヘビー・ウェザー」と並んで70年代の新しいジャズ、クロスオーヴァーフュージョンの口火を切る大ヒット作になりました。この音楽性は親分マイルス・デイヴィスが先に始めましたが、門弟たちの方が洗練された音楽を作ったのでマイルスは彼らの前座バンドにされて機嫌が悪かったといいます。検索の便にアルバム名をあげましょう。
Miles Davis:In A Silent Way
-:Bitches Brew
-:Jack Johnson
Herbie Hancock:Head Hunters
Chick Corea:Return To Forever
Weather Report:Heavy Weather

フュージョンが生んだ最大のスターはフレットレス・エレクトリック・ベースのジャコ・パストリアスでした。お聴きになったハンコックとジャコ・パストリアスの共演作はどのアルバムからかわかりませんが、ジャコは近年では珍しいタイプのジャズマンで、精神疾患の悪化から奇行を繰り返して活動が不規則になり、ウェザー・リポートもクビになります。来日公演の滞在時には頭に植木鉢を載せてホテルの廊下を全裸で練り歩いたり、ギャラが尽きるまで連日ソープランド通いをして関係者を呆れさせました。
家庭も崩壊してホームレスになり(公園の公衆電話がジャコの連絡先でした)、最後はジャズ・クラブに食事をたかりに行ってガードマンに撲殺されました。あまりに唐突で異様な死因もあり、逝去の報を新聞で読んだ時のショックは忘れられません。

クロスオーヴァーとは音楽のジャンルではなく、この場合はジャズのジャンルのアルバムがロックやポップスのリスナーを獲得したという進出現象を指す音楽業界用語です。だからポピュラリティのある70年代ジャズはまもなくフュージョンという新しいジャンル名で呼ばれました。
これではまだ全然歴史的背景の説明が足りませんが、後日また。