人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(補2e)レニー・トリスターノ(p)

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Lennie Tristano(1919-1978,piano)。
まるでデス・マスクのようなジャケットの、
Continuity(画像1)58.10/64.6.6
-はウォーン・マーシュとのワンホーン・カルテット(58年)の4曲と、リー・コニッツ、マーシュとのクインテット(64年)の3曲からなる発掘ライヴ。64年のライヴはTV中継で、DVDやネットでも見ることができる。折角の発掘ライヴだが49年や50年、52年のライヴと較べると、ギターのビリー・バウアー不在だけではない覇気のなさを感じる。出戻りのコニッツに対してマーシュはトリスターノの忠実な弟子で、自身のソロ活動でもトリスターノの音楽性から離れなかった人だった。だがこのアルバムではリーダーのバンド統率力自体が弱まっているように聴こえる。

フル・アルバム第2作、
「ニュー・トリスターノ」The New Tristano(画像2)60-62
-は自宅スタジオで制作されたソロ・ピアノの金字塔で7年ぶりの新作。全7曲中'You Don't Know What Love Is'以外はオリジナルと記されているが、実際はスタンダードのコード進行にテーマなしのアドリブを乗せたもの。'C Minor Complex'が白眉だろう。バド・パウエルと並び賞されたトリスターノの本領が存分に発揮されたが、陰鬱で難解な音楽に聴こえても仕方ない親しみづらさがある。

自宅スタジオ録音の発掘アルバム、
Note To Note(画像3)64-65/93
-は異色作(この人は全部そうだが)で、ベースとのデュオで5曲を録音し「ドラムスをダビングすること」と指定して遺されていた。没後15年の93年に長女のキャロル・トリスターノがドラムスをダビングしてCDリリースされた。
音楽はまたしても異常空間で、元々ドラムレスだから作風は初期作品に近いが、1曲平均8分捉えどころのない演奏が続く。全曲オリジナルだが実際はスタンダード集で'Out Of Nowhere','There Will Never Be Another You'などを演奏しているが、意図的にテーマが空中分解してなし崩しにアドリブになる。テーマもコード進行もないフリー・ジャズは本人が創始者だが、ここではテーマもコード進行もありながらフリーなアドリブに挑んでいる。