人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(補2f)レニー・トリスターノ(p)

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Lennie Tristano(1919-1978,piano)。
トリスターノ唯一の歌伴アルバム、
Betty Scott Sings With Lennie Tristano(画像1)65.5.13,14/71/74
-はスタンダード集で、ベティ・スコット(トリスターノ教室の生徒だったらしい)にとっても唯一のアルバム。アメリカの音楽サイト'allmusic.com'の評を訳出引用しよう。
「非常に貧弱な歌手と組んで、あるいはもっと優れた歌手のためのデモテープが目的だったのかもしれないが、彼女の力量ではその役目すら果していない」。

トリスターノは65年の10月~11月にヨーロッパの音楽祭に招聘されて、円熟したソロ・ピアノ演奏をライヴ録音に残す。
Concert In Copenhagen(画像2)65.10.31
-は没後発表になったのが惜しまれる出来で、即興曲2曲とスタンダード6曲からなる40分のアルバム。これはライヴ映像もあり、日本盤DVDでも「レニー・トリスターノ・ソロ/コペンハーゲン・コンサート」(05年)として発売された。バンドでもソロでも、トリスターノはライヴ録音のほうがわかりやすい。このライヴもソロ・ピアノのスタジオ盤「ニュー・トリスターノ」よりわかりやすく音楽の魅力が伝わってくる。
また、トリスターノの特徴でありビル・エヴァンスを筆頭に多くのピアニストに影響を与えた密集した音程の和音、アドリブがDVDでは目で逐える。トリスターノは全盲なので鍵盤から指が離れない。ビル・エヴァンスの鍵盤に凭れるような奏法のヒントになったらしい。

トリスターノはその後68年に2回だけライヴの記録があるが、78年の逝去まで演奏活動にはついに復帰しなかった。残された最後の録音は66年の自宅スタジオでのトリオ2曲'Stretch','Con-Con'で、日本のイーストウィンド・レーベルがトリスターノから直接発売権を取りつけた77年の未発表録音拾遺アルバム、
「メエルストルムの渦」Descent Into Maelstrom(画像3)52-66
-に収められている。全10曲が強烈な印象を残す。多重録音のソロ・ピアノによるタイトル曲はフリーそのもの。52年から66年まで一貫して自己のスタイルを追求したトリスターノの全体像がここにある。