人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(補10d)アンドリュー・ヒル(p)

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Andrew Hill(1931-2007,piano)。前作「離心点」は特別なアルバムだった。ドラムスがトニー・ウィリアムズの上に2月に唯一のブルーノート作品'Out To Lunch'を録音したばかりの天才エリック・ドルフィー(6月に急逝する)、ケニー・ドーハムジョー・ヘンダーソンの絶好調の師弟コンビがフロント陣なのだ。アルバム全編が鬼気迫る。ヒル作品で唯一、60年代ジャズの古典的名盤とされているのもメンバーのラインナップによるものが大きく、その点で必ずしもヒルの代表作とは言えない面がある。

連作第5作の、
Andrew!!!(画像1)64.6.25
-は前4作から間を置いて発表された。ハッチャーソン(ヴィブラフォン)、デイヴィス(ベース)、ジョー・チェンバース(ドラムス)にジョン・ギルモア(テナーサックス)のワンホーン・クインテット。これは「離心点」よりすっきりしていて聴きやすく、ヒルの本来の音楽性が出ている。ギルモアはサン・ラ・アーケストラのメンバーで、コルトレーンをも唸らせた人だがあまり出番がなく、ソロもヒルの指示かジョー・ヘンダーソンそっくりに吹いている。アルバム冒頭の'The Griots'からテナーなしのカルテットで、全編がサックスは味つけ程度だが、成功作だからいいだろう。

ここからヒルの未発表作の時期が始まる。
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-は他の未発表録音とともに75年に発掘発表され、単独アルバムは2006年のCD化までまとめられなかった。編成はフレディ・ハバード(トランペット)、ジョー・ヘンダーソンにデイヴィスとチェンバースの2管クインテット。オーソドックスな編成だからか、ストレートなバップ的テーマ・アンサンブルで一曲目の'Eris'や続くタイトル曲から乗りがいい。ただしヒルのプレイはバックもソロも大暴れして、「離心点」でのようにホーンに位負けしていない。'Eris'など途中でエイト・ビートとのポリリズムになる展開などハッとするのに未発表とは、初期5作のセールス不振を勘ぐらざるをえない。

Bobby Hutcherson:Dialogue(画像3)65.4.3
-はハッチャーソンの処女作だが実質的にヒルとチェンバースの共同リーダー作だった。次回で触れる。