筆者はいわゆる少女戦士ものや変身ヒロインもの、魔法少女ものは、娘と一緒に「美少女戦士セーラームーン」(再放送)「東京ミュウミュウ」や「ぴちぴちピッチ」、「おとぎ銃士赤ずきん」などを見ていたが、これらは土日の早朝というずばり幼児向けの時間帯に放映されていた。今年で10作目のロングラン・シリーズになった「プリキュア」もそうだ。だが「まどか」は深夜帯アニメだった。
設定上は「魔法少女まどか☆マギカ」はプリキュアと大差ない。というより、あえてプリキュアを連想させるような(プリキュアを知らない人でも既視感を覚えるような)段取りでヒロインたちは魔法少女になる。「ふたりはプリキュア」でいえばミップルとメップルだが、異世界からやってきた小動物のぬいぐるみ状の生物から選ばれて、強大な悪と戦う変身魔法少女になる。プリキュアでは魔法を授ける生物は「妖精」と呼ばれるが、「まどか」で妖精にあたる「キュウべえ」がヒロインたちを魔法少女にした真の目的は、実はとんでもないものだった。つまり既視感を与えるような設定自体が、推理小説や手品でいうミスディレクション(錯覚)になっている。
放映中から「新世紀エヴァンゲリオン」と比較されたように(海外でもその評価は定着している)、物語は敵との戦闘よりもヒロインたちの葛藤に重点が置かれている。少女たちが迎える運命は、「エヴァンゲリオン」よりもさらに迫真的でむごたらしい。前者では苛酷な状況は徐々に加算されていくものだったが、「まどか」の少女たちは希望を削ぎ落されていくのだ。
劇場版の前後編はテレビ・シリーズ12話の総集編だったが、10月26日から上映の「新編・叛逆の物語」は純然たる新作で、全国129館中51館で深夜0時から最速上映される。つまりこの記事の投稿と同時だ。今ごろ魔法少女たちはどんな運命を迎えているだろうか。