人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

CANというバンド

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 1968年にドイツで結成された特異なバンド・CANは、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドと並んで、直接PILやJAPAN、ジョイ・ディヴィジョンをはじめとしたポスト・パンク勢に影響を与えた大きな存在です。また、ドイツ出身のバンドとしてはクラフトワークタンジェリン・ドリームスコーピオンズと並んで国際的成功をおさめた数少ないグループのひとつでした。中心メンバーであるイルミン・シュミット(key)は現代音楽指揮者、ホルガー・シューカイ(b)は前衛音楽家、ヤキ・リーベツァイト(ds)はフリージャズの分野で活動しており、バンド結成時には彼らは全員30歳でした。シューカイの生徒で20歳のロックギター青年ミヒャエル・カローリを加入させ、このドイツ人四人がドイツ留学中の黒人画家マルコム・ムーニーをヴォーカルに誘って録音した最初の曲がデビュー・アルバム冒頭の『ファーザー・キャンノット・イェル』です。

CAN入門に最適の、バンド自選の良くできたベスト盤「カニバリズム1&2」には「フューチャー・デイズ」(画像3)と双璧をなす大傑作デビュー作「モンスター・ムーヴィー」(画像1)が全4曲中3曲入っています。先の通り初期はアメリカ黒人ヴォーカル、中期は日本人ヒッピー青年ダモ鈴木がヴォーカル(画像2「タゴ・マゴ」~「フューチャー・デイズ」)、後期はドイツ人4人+アフリカ人2人になりますが、初期と中期はどのアルバムのどの曲もアイディアの奔流で冴えまくっています。だから全盛期は「カニバリズム2」前半まで。「フューチャー・デイズ」はバラせない、という理由で「カニバリズム」には選曲されていません。

初めて買った英米以外のロックが「カニバリズム」で(LP2枚組、当時はまだ「2」はなかったのでただの「カニバリズム」)、その次がオザンナ「パレポリ」(イタリア)、その次がピュルサーの「ハロウィーン」(フランス)でした。オザンナとピュルサーはなかなか集まらなかったけど、カンはバンド自身がきちんとマスター・テープの権利を確保しており、自主レーベルから再発売していたので、全アルバムを一枚一枚揃えていくことができました。そのくらいぼくには思い出の多いバンドです。
 映画「ノルウェイの森」でもCANの曲が全編に採用されています(レディオヘッド監修)。それほど今日性のある存在です。