人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟の思い出12

イメージ 1

イメージ 2

・3月3日(水)晴れ
「朝の血圧測定では上120下90という尋常なものに戻る。処方がこれまでの3種類からいきなり13種類に。尿もオレンジ色になる。朝食後は朝会まで仮眠、その後すぐ介助浴になる。介助など不要なのだが、アル中入院の患者はこれが規則なのだろう。『クルーソー』上巻の末尾数十ページを読み返し、下巻200ページまで読み進める。喫煙室で駄弁ったり、ゲーム盤やトランプ(生れて初めてセヴンブリッジをやった)でだらだら過ごす。昼食はひなまつりメニューのちらし寿司だった。S病院でも七夕メニュー、F病院では年越しそば食べたっけ、と思い出す(注1)」

・3月4日(木)曇り
「今朝の血圧はまた高め。今日も朝食後は朝会まで仮眠。デイルームではKくんとMさん、Sくんと雑談、Sくんと将棋一局打って勝ってしまう(注2)。D先生の問診が昼食直前にあり、現在の状態の質問や処方薬の説明を受ける。午後は長いが集中できず『クルーソー』下巻の340ページまで。夕食後にKくん、Sさんとオセロ一局ずつ打ち、それぞれ4目差、7目差で負ける。喫煙室でHさん(中年女性)になじんでますね、と言われる。『クルーソー』下巻就寝前に読み終える」

・3月5日(金)晴れ
「午後のリクリエーション時間に、看護婦さんふたりに連れられ、屋上で日光浴する。ここからも日によっては富士が見えるという。今日の気温は20度。夕食後のデイルームはテレビ観賞の人多し。Kさんに障害者手帳取得とそのメリット、申請方法を生保ともども尋ねられる(注3)」

・3月6日(土)雨
「D先生による素行診断で月曜日から第二病棟に移ることになった。煙草もやっと自己管理になる(注4)。Kくん、Mさん、Sくんに喫煙室で報告。三人ともしきりに残念がる。風の又三郎だな、とMさんがうまいことを言う」(続く)

(注1)向精神剤の副作用で肝機能障害を起しており、周囲がえび天そばを食べているのに、山菜そばで悔しかった。
(注2)Sくんは横浜のドヤ住まいで、ドヤの人はみんな将棋には腕に覚えがある。一緒にしてはいけないが、刑務所暮しのヴェテランも将棋はとても強かった。
(注3)現金資産3000万と完済済み高級マンション、特許収入と株式運用で暮すKくんに生保は通らない。
(注4)それまではいちいちナースステーションで一本ずつもらっていた。