人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟の思い出23

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・3月15日(月)晴れ
「午前中は学習プログラムなし、午後はヴィデオ。今日は波乱はない。N先生へのメール書き上げて送る。第三病棟から遊びに来たSくんから、あの婆さん隔離室に入れられましたよ、と聞く。ティッシュペーパーの箱の裏に助けて下さい、と書いて他の患者に嘆願したりしたらしい。Kくんは診察日。退院は入院日から数えて三か月に延びたという。つまりほとんど同時に退院することになる。Mさんはゴールデンウィーク前後が退院予定だから、その後Kくんの子守りが一手にかかってくる。どうなるやら。晩にYくんに第三のTや婆さんの説明すると爆笑される」

・3月16日(火)晴れ
「熟睡していたらけたたましいサイレンの音と自動アナウンスで起こされる。第三病棟で火災が発生しました。くり返しお知らせします。第三病棟で火災が発生しました。職員の指示を待つにしろ、部屋で待機すべきか、デイルームに集まった方がいいか、とりあえず屋外避難の可能性を考えて服を着る。アナウンスはくり返し続く。他の人たちはどうしているか、と廊下に出てみるとほぼ全員がデイルームや喫煙室にパジャマ姿でいるので、隣のベッドの鼻毛に声をかけ、さっさと喫煙室に向う」

「アナウンスは続いているが本当に火災が発生しているならそろそろ、もうとっくに消防車が来るなり職員の指示があるだろう、と皆で話していると、録音アナウンスではなく看護婦の肉声で、お知らせします、先ほどの火災警報は誤報であるとわかりました、と二回くり返され、サイレンも止んだ。一斉にブーイング。こんな朝五時半に迷惑もいいところですよね、と気が抜けてみんなで一服していると、上はトレーナーだが下はトランクス一枚のKくんが焦燥して疲れた表情でふらふらと喫煙室に現れたので全員唖然(注)」

「なんでトランクス一枚かというと、佐伯くんに起されてどうせどこかのバカかあの婆さんに違いない、と急いで第三病棟の警報器を止めに行った。看護婦じゃ止め方知らんだろ?彼は後から来た看護婦に第一声、おれは犯人じゃない!と叫んだらしい。バカか婆さんだと判断したなら急ぐ必要などないのに。昼食時も彼は、おれは第三じゃパンツ一枚の男になっている、とボヤいて全員苦笑。で、おれは犯人じゃない!な、とMさんがつけ足してみんな爆笑」(この日続く)

(注)なぜ服を着てから来ないのか理解に苦しむ。