人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟の思い出51

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・3月21日(日)晴れ
〈祝・春分の日
(前回から続く)
「入浴しているとYzさんが入ってくる。珍しくYzさんから話しかけてきて、いっぺんに五人まとめて移ってきはしないよ。そうですね(注1)。風呂上り、日記の続き。一服しようと喫煙室に出ると、デイルームではほぼ全員集合して高校野球の春の選抜を見ている。夕食まで間もない。煙草の後は自分の食事席に着いてスポーツ新聞を眺める。最終回で、10点差をつけた方がホームランを打ったところで食事が運ばれてくる。あーあ、最後まで観たいな。まああれで決着ついたようなもんだよ。食事終了まであと二人になりテレビが点くと、14対4。ほらな」

「夕食後の服薬は、今第三もめてるから、と婦長さんが各人に配る。佐伯さん、包み紙はゴミ箱じゃなくてあっち(新聞広告を折って作った小箱があり、後で看護婦が点検する)。一度注意されたら忘れませんよ。一度あることは二度あるかもよ(注2)。食後の一服に喫煙室に入るとKくん、Uzさんと次々入ってくる。このメンバーは安心するわ、とKdさんも来る。なんでですか。ふふふふ。おれとKくんは人畜無害だからじゃないかな。Yzさんも入ってくる」

「ところで明日どこへ散歩に行く?とKdさん(注3)。坂のないコースだと今日とは逆方向で、往復一時間程度のところに神社がある、とYzさん。KdさんがKくんに、そこで厄払いしてもらってあんたにあげるわ。ところで今日の灰皿掃除どうなってんだ、昼にやってないよな、とKくん。誰なんですか、あいつか?と補聴器のハウリングを点検しているKyさんを指す(注4)。わかってないんじゃないですか?そんなことないよ、とYzさん、去年あいつとここにいたもの。リピーターですか。時間になったらおれが言うよ、誰も知らなかったらおれたちでやろう、とYzさんがまとめる」
(続く)

(注1)前回のKくんの大騒ぎを指す。第二病棟は順繰りに退院するので、第三病棟からの移室で満床にはならない、という意味。
(注2)この婦長さんはカンがいいというか疑り深く、筆者の退院時にも断酒の誓いは口だけでしょう、半年以内に再入院しますよ、と言われた。確かに半年後に別の病院に再入院したが酒ではなく躁鬱病の悪化が原因だった。
(注3)翌日も振替休日で学習が休みのため。
(注3)Kくんの趣味は犯人追求。