人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟の思い出42

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・3月20日(土)晴れ
(前回から続く)
「週末帰宅外泊の人が多いからこの土日も学習プログラムはないが、夕食後の19時~20時、M市断酒会の会員男性二名が来て、自分の酒歴、アルコール依存症時代、治療後の断酒歴を披露し、断酒会においでになれば皆さんにもかけがえのない出会いがあるかもしれませんよ、とスピーチ馴れしたよく通る声で、皆さん、断酒は第二の人生ですと締めくくった(注1)。断酒会はAA(こちらはアメリカで始まったもの。行事や形式はどちらも大差ない)と並ぶアルコール依存症患者の二大自助グループ(注2)で全国各地にネットワークができている」

「なぜ断酒達成者でも自助グループへの参加が奨励されているかというと、現代の精神医学では脳医学的な根拠に基づき、アルコール依存症は一度陥ったら完治しないとされているからだ(注3)。飲酒への耐性は人さまざまだが脳内に快楽系が形成される人とできない人があり、快楽系が形成された人はアルコール依存症で、この神経系統は一度形成されたら最後、生涯脳内に残留する(注4)」

「だからアルコール依存症への有効な手段は完全な断酒しかないが、月一回程度の通院だけで断酒するのは難しい。そこで三つの柱として、『一日断酒』(注5)『抗酒剤』、『自助グループ』が奨励される。抗酒剤を服用し、今日一日断酒を達成し、自助グループで大勢の(注6)元アル中仲間と報告しあう。なるべくまめに参加するのが望ましい」

(注1)やっとタイトル通りの話題が出てきた。
(注2)自助グループとは特定の疾患患者や家族が参加する病院外での交流会で、精神疾患は各種に分かれ、アルコール依存症精神疾患に分類される。患者同士の交流によって病状の悩みを打ち明けあい、再悪化を防ぐのが目的。
(注3)元ライターで木樵のKmさんのように例外的に完治と診断された人もいるがおそらく彼は躁鬱病の悪化状態下で過剰飲酒があり、一時的な症状からアルコール依存症と誤診されたと推測される。
(注4)擬似化学っぽく眉唾ものだが、統計的な現実でもそう診断される。
(注5)『(今日)一日断酒』とは、断酒の目標を今日一日我慢する、と最小限に定め、それを毎日続けていくことを指す。
(注6)入院中のノルマとして街中の断酒会とAAに各一回参加したが、どちらも50人ほどの入院経験者が参加していた。