人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記72

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・3月25日(木)雨
(前回から続く)
「そんな具合に一種の嫌悪感を周囲に振りまきながらSk・Kw二人の(彼らにはさんづけして記する気も起らなくなった)の独演会で始終したような今日のグループ・ミーティングだった。しかも彼らはそれを愉しんでいるのがありありと感じられた。ある種の犯罪者を類推してもそう的外れではないだろう、というより彼らはそれを誇るに違いないのがなおさらやりきれない気分にさせられる。これまでアルコール科病棟の入院患者は悪くいっても他人に無関心な程度で(HAや、それに彼女と一緒にしてはずまないがKくんなんかは迷惑患者の部類だろうが、アルコール科の患者ではないし、それぞれが統合失調症なり双極性障害なりの症状でお騒がせしているのにすぎない)飲酒歴がおそらく人格形成にまで及んでいるような人はいなかった。無愛想、さもなくばむしろ控え目なくらいの人、いわばアルコール依存症入院を責務として引き受けている慎みがあるのは、人それぞれであれ入院生活の様子からでもわかった。先入観はなかった。これまでの精神
科入院でも100人いれば100通りの苦しみがあるのを見てきた。だがこういう人たちもいるのだ、嬉々として入院してくるアルコール依存症常習患者」

「同室(Kくんを含めて四人部屋)のYnさんとAtさんは物静かで穏やか、理想的な同室者だが(Kくんはそこが気に入らないらしい)よくあちらから話かけてくれるようになった。浴室の脱衣場で隅のカゴを使おうとすると、こちらどうぞ、取りやすいでしょう、と上がってきたばかりのYnさんが自分のカゴを抜いてくれた。本当は隅の角位置が好きなのだが、なるほど肩の高さの段だからYnさんの好意を受け取る。どうも、と入浴すると、ほーい、とAtさんとSkさん(やっぱり年長者だし呼び捨てで書けない)から返事が返ってくる。Kyさんは補聴器を外しているので気づかない。Atさんには妙に気に入られている感じがする。Skさんは軽石で入念に踵をこすっている。あまりに入念なので後から入ったこちらの方が先に上がる。うっかりあいさつせず出てしまったが、すぐにSkさんも出てくる。ここは毎日入浴できるのがいいですね。そうですね、たいがい週二、三回ですものね。まあ、友好的である限りは気さくなおじさんといったところだ」