男料理というとこんな簡単なものになる。目玉焼きを付けても良かったがそこまで食べなくても十分で、顆粒のコンソメで薄切り玉ねぎのコンソメスープを作って、あとは生野菜サラダでもあればいいのだがこれで人参約5cm分、ほうれん草4株を使っている。ソテーにすると株の部分はともかく葉と茎は見事にしぼむ。人参の場合はソテーではなくグラッセと呼ぶのかもしれない。茹でるより蒸し焼きの方が早いし手前がかからない。ついでに言えば自分が食べるだけの料理なら皮も剥かない。火が通ってしまえば皮などほとんど気にならない。
これと米飯を茶碗二杯で夕食とする。生野菜とは言えないかもしれないがキムチも数回摘んだから、醗酵食品も摂取したことになる。こういう手軽なメニューで健康を保てるならありがたい。見栄えは冴えないが、食べればおいしい。加熱したおかげでほうれん草の青々しさが褪せてしまったのが無念ではある。肉眼ではもっと葉脈の青さが見えるのだが、写真に撮ると赤みの方が強くなって青みにかぶってしまうのだ。だから人参の方は得をしている。ハンバーグはどうかというと、まあスーパーで買ってきた生ハンバーグを焼いたものだから、本格的な手ごねハンバーグを期待してもらっても困る。
手順としては、まず人参を蒸し焼きにして、ほどほどのところでほうれん草の株の部分をあわせて蒸し焼きを続け、適度なところでほうれん草の茎とハンバーグを投じる。ハンバーグの片面が焼けたら裏に反してほうれん草の葉を野菜ソテー部と炒めあわせて、ハンバーグが両面とも焼き上がったら全体の出来上がり。あらかじめ作っておいた薄切り玉ねぎのコンソメスープは陶製のマグカップに注いであるから、料理の盛りつけやご飯茶碗の仕度をしている間に電子レンジで温めなおせばいい。コンソメスープはおいしいが、どんな具でも合う応用面では味噌汁の敵ではないような気がする。これを一気に具沢山にでもするとミネストローネ(70年代の日本ではまだ野菜スープと呼んでいた)やポトフに出世してしまうので、米飯に添える汁物にとどめるなら薄切り玉ねぎに賽の目切りのじゃがいも程度の分際と思える。
これでハンバーグも自家製で作れればなお良いのだがそこまでやると負担が大きい。なんにしろ、料理中は心が無になる。自炊できる男に育ってよかったとしみじみ思う。