人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記143

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・4月3日(土)晴れ
(前回から続く)
「テンション高い、どころか、第三病棟で一緒だった時のSaさんは訊かれもしないのに自分の過去をまくしたてるような人ではなかった。常識的には言動に現れた奇行というべきで、本人もその自覚がないなら、と思うと気持が暗くなる。若い女性が言う通りSaさんは今も第一病棟に入院しているなら、買い物帰りにこの建物の階段を上って行ったのはおかしいが、古巣だった第三病棟の人たちに会いに行ったのかもしれない。第一病棟も厳密には完全な閉鎖病棟ではなく、院内散策や病院前のコンビニへの買い物くらいは許されている。保護者同伴でない半日外出や外泊(独居の場合)は許可されない、という程度のようだ」

「平日でも離れの第一病棟から第三病棟に出入りはできるが、家庭がある人は帰宅外泊するから土日は患者数が三分の一ほどになる。ごったがえしている時に別の病棟から訪ねていくと看護婦から文句も言われるが空いている時なら割と寛大かもしれない。しかも今のSaさんは陽性症状まっただ中でだから何よ状態だろうから、第三病棟で顔見知りを見つけてはどばーっ、と一方的に話しては次の人に移る、という様子が目に浮かぶ。つまり陽性症状の時のHAと同じだ。本人にも抑制が利かないのだから仕方ないのだが、日頃の鬱憤がこの時とばかりに噴出しているように見えるのも確かで、それを言えば双極性障害=1型の暴躁期など統合失調様症状も伴って人格すら疑われかねない。それが原因で離婚に至った人間もここにいる」

「そういう時期…と若い女性は繰り返して、彼女自身の病歴を話し始めた。統合失調症。一回目は『彼氏』との別れで錯乱状態になり第一病棟1Fに入院(規則が厳しく、いじめにあってつらかった)、二回目(今回)は母との確執からキレてしまい第一病棟2Fに入院(2Fではそれほど規則は厳しくない、ただし原則1Fは女性病棟、2Fは男性病棟なので女性の部屋のカーテンはピンクで男性はグリーン、あまり体の線の見える服は着ないよう言われている)、今日はこれから帰宅外泊なんです。月曜日に戻って、火曜日に主治医の先生と母と一緒に面談して退院を決めてもらうつもり…。先生はどなたですか?Dm先生です。ああ、なら当日は無理でも翌日退院できるかもしれませんね。ぼくもDm先生ですが、面談の予定がOKなら退院も確定でしょう」
(続く)