人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アル中病棟入院記147

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・4月4日(日)晴れ・にわか雨
(前回より続く)
「午後は日記を書いて過ごす。ちょっかいかけてくる人物も留守なので数日分がはかどる一方、倦怠感と退屈もますますつのるが仕方がない。入院に飽きてきているな、というのはここ数日間の出来事を振り返っても何の感興も湧かないからだが、これは周囲が変化したからではない。今は自分自身が周囲に関心を持てなくなっているからで、おそらく退院までにはまた意欲的に周囲に関心を向ける時期と倦怠期がもう一巡くらいはあると思われる。たぶん学習の第一段階が円環を閉じた、というところなのだ。倦怠、というよりは一種の疲労かもしれない」

「午後三時頃から外泊患者が次々と帰ってくる。月曜の午前のプログラムに間に合えばいいから月曜まで外泊してくる人もいるが、朝に手続きするのは慌ただしいので月曜が祝日でもない限り、ほとんどの人は土曜日の晩一泊で病棟に戻る。ただいま。おかえりなさいが苦笑まじりの形式的なあいさつだ。今日は自分でもうんざりするほど無感情、かつ無愛想になっている。普段親しい人たちに話しかけもせず、話しかけられても会話に加わらない」

「夕食の席でも無口のまま通す。同じ食卓の女性たちの表情が、佐伯さん今日は不機嫌なんだわ、何かあったのかしら、そっとしといておきましょ、と無言で会話しあっているのがわかるので申し訳ない気持になるが、少なくとも八つ当りのようにはとられていないので、そのまま無言で通す。そのこともあまり気にしないことにする。夕食後はようやく『不道徳教育』の残り数章を読み終え(結局、「無政府資本主義」の可能性以外の話題は大した本ではなかった)、まだ第三病棟は戒厳令下らしく、就寝前薬は第二病棟のナースステーション窓口で時間指定され、21時から15分間だけ受け取り・服薬することになる」

「YnさんもAtさんも珍しく外出したからか、服薬後は早々寝てしまう。まだ22時にもならないのにNj看護婦が巡回にくる。ベッド頭部のライトは23時の最終消灯時まで点けていていいことになっているからベッドを仕切るカーテンを閉めて日記を書いていたが、もう寝ている人がいるからデイルームで書いて下さい、と言われる。読書していたらどう言われただろうか。日記を書いているのがどれほど睡眠妨害になるというのだろう。一々注意したがる人なのだ」(続く)