人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アメリカ喜劇映画の起源(18)マルクス兄弟6

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 マルクス兄弟映画全13作をほぼ客観的に採点してみましょう。これは今日の観客にとっての衝撃度を基準としており、当時の興行収益は評価に加算しておりません。1~5はパラマウント社作品で画像中、6~11はM.G.M.社作品で8を除き、独立プロからの12を加えて画像下のボックスセットに各々収録されています。8は兄弟の本来のレパートリーではない舞台劇の映画化、13はハーポ主演でチコの見せ場が少々、グルーチョはイントロとアウトロで顔を出すだけで正式にマルクス兄弟映画と言えるか難しい独立プロ作品で、この二作はボックス未収録の単体商品でしか再発売されていません。評価はやや極端に差をつけました。

1.ココナッツ(1929)★★★★★
2.けだもの組合(1930)★★★★☆
3.いんちき商売(1931)★★★★
4.御冗談でショ(1932)★★★★☆
5.我輩はカモである(1933)★★★★★
6.オペラは踊る(1935)★★★☆
7.マルクス一番乗り(1937)★★★
8.ルーム・サーヴィス(1938)★
9.マルクス兄弟珍サーカス(1939)★☆
10.マルクスの二挺拳銃(1940)★★☆
11.マルクス兄弟デパート騒動(1941)☆
12.マルクス捕物帖(1946)★★
13.ラヴ・ハッピー(1949)★☆

 しかし彼らの代表作としては第一に『我輩はカモである』(画像上)、次いで『オペラは踊る』『マルクス一番乗り』『マルクスの二挺拳銃』『マルクス捕物帖』とご覧になるのをお勧めします。初見で『我輩はカモである』を理解するのはまず不可能です。たった68分の中に優に三本分を越える映画に匹敵する内容が詰め込まれた結果、難解なことが描かれているわけではないのにほとんど物語上の連続性や意味の関連が不明になり、観終えても一体何が起っていたのか断片的な悪夢のようにしか思い出せない。そんな作品です。

 ですが『オペラは踊る』から後のマルクス兄弟映画は明快なストーリーを持つ作品ばかりで、過不足のない娯楽映画です。それらを楽しんだ後で『カモ』を観直すと今度はぶっ飛びます。本当にすごい作品は周辺作品を手当り次第に観て初めて真価がわかる。文学作品やマンガ、音楽でもそうでしょう。マルクス兄弟パラマウント期、なかんずく頂点をなす『カモ』もそういう作品なのです。