人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

新編☆戦場のミッフィーちゃんと仲間たち(28)

 ではまずこれに乗ってみてください、とミッフィーちゃんの前に置かれたのは、人間ならば小学校低学年向けだろうと思われる自転車でした。ミッフィーちゃんはつま先立ちしてサドルになんとかつかまりましたが、足をかけてよじ登り、またぐことはできません。無理みたいですね、ではこれはどうでしょう。
 今度は一輪車でした。これなら高さを調節できますからね、と腰の高さ程度に座高を調節してもらい、でも私、一輪車なんて乗ったことないんですけど。そんなの気になさらずにいいんです、乗れなければ乗れないのも大事なことですから、と係官を名乗る女性は言い、ミッフィーちゃんをうながしました。なるほど、要するにデータを取りたいわけね、と合点はいきましたが、ミッフィーちゃんだってそんなふうに、まるで実験どうぶつのように扱われるのは、いくら子うさぎとはいえあまり気分の良いものではありません。
 乗りなさい、と係官の女性の口調が変わりました。しぶしぶミッフィーちゃんは、やあっ、と一輪車に乗ってみました。うまくまたげず、横むきですが、まるでパズルの破片がはまるように一輪車のサドルの上でミッフィーちゃんは微動だにしませんでした。カメラらしきシャッター音がしました。何で私、こんなことやらされているのかしら、と初めてミッフィーちゃんは思いました。
 では進んでみてください、と係官は言いますが、ミッフィーちゃんには一輪車の進め方が、わかりません。だいいち、足がペダルを踏んでいないのです。係官はミッフィーちゃんの困惑を察したか、体重を移動させてごらんなさい、と言ってきました。ミッフィーちゃんはそうしようとしましたが、体重どころかからだ全体がスライドしてしまい、サドルからころげ落ちてしまいました。
 痛ったーい、とミッフィーちゃんは大げさに声を上げました。ですが女性係官は意に介さず、では三輪車に乗ってください、三輪車なら乗れますよね?とミッフィーちゃんにだめ押ししました。三輪車ならミッフィーちゃんも乗ったことがあります。女性は三輪車を横に置きました。ミッフィーちゃんは横に置かれた三輪車をまたげませんでした。
 ではこれならどうでしょう、と係官は三輪車を真正面に向けました。乗れます。次に三輪車を後ろ向きにしてみました。乗れます。そうでしょう、と係官はうなずきました。これではっきり確認が取れました。あなたは、いつも平面のうさぎなのです。