人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

Ornette Coleman Quartet - Ornette on Tenor (Atlantic, 1962)

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Ornette Coleman Quartet - Ornette on Tenor (Atlantic, 1962) Full Album : http://youtu.be/nl7-dYBwfs8
Recorded March 22 & 27, 1961
Released December 1962, Atlantic 1394
(Side A)
1. "Cross Breeding" - 11:17
2. "Mapa" - 9:05
(Side B)
1. "Enfant" - 6:27
2. "Eos" - 6:35
3. "Ecars" - 7:34
All compositions by Ornette Coleman.
[Personnel]
Ornette Coleman - tenor saxophone
Don Cherry - pocket trumpet
Jimmy Garrison - bass
Ed Blackwell - drums

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 ("Ornette on Tenor" Atlantic 1394 Liner Notes)
 この『オーネット・オン・テナー』には注目点が3つある。1はタイトル通りアルトサックス奏者であるオーネットがテナーサックスを全編で吹いた初めてのアルバムであること(他には『ソープサッズ、ソープサッズ』1977があるがベースのチャーリー・ヘイデンとのデュオという特殊なアルバムで、1曲はトランペットを吹いていた)。2にアトランティック・レーベルへの画期的な6枚(ゲスト参加作、後年の未発表録音集除く)のうち最後に録音・発表されたアルバムであること、3にジョン・コルトレーン・カルテット加入直前のジミー・ギャリソンがピアノレス・カルテット初の黒人ベーシストとして参加していることで、発表当時の評価は他のアルバム同様非常に高かった。ダウンビート誌1963年1月3日号では★★★★★の最高点がつき、「これまでの大成功したアルバムと並ぶ作品、作曲部分は減少し、インプロヴィゼーションはより増大している」と述べている。以前にも上げたが、オーネットのアトランティック・レーベルのアルバム・リストをもっとすっきりとした表記で再掲載してみたい。
 
1. 『ジャズ来るべきもの』The Shape of Jazz to Come (1959年5月録音/1959年10月発売)
2. 『世紀の転換』Change of the Century (1959年10月録音/1960年6月発売)
3. 『ジス・イズ・アワー・ミュージック』This Is Our Music (1960年7月・8月録音/1961年2月発売)
4. 『フリー・ジャズ』Free Jazz : A Collective Improvisation (1960年12月録音/1961年9月発売)
*. ジョン・ルイス『ジャズ・アブストラクションズ』John Lewis / Jazz Abstractions (1960年12月録音/1961年9月発売) *参加作品
5. 『オーネット!』Ornette! (1961年1月録音/1962年2月発売)
6. 『オーネット・オン・テナー』Ornette on Tenor (1961年3月録音/1962年12月発売)
7. 『即興詩人の芸術』The Art of the Improvisers (未発表曲集・1,2,3,5,6より/1970年11月発売)
8. 『ツインズ』Twins (未発表曲集・1,3,4,5より/1971年10月発売)
9.『未知からの漂着』 To Whom Who Keeps a Record (未発表曲集・2,3より/1975年末・発売)

 アトランティック・レーベル時代のオーネット作品は総合点で全作★★★★★という評価が定着している。だが現在、この『オーネット・オン・テナー』については、allmusic.comの評価にあるように「優れたアルバムだが、相対評価としてはアトランティック時代の最後で行き詰まりを見せたアルバムとせざるを得ない」と、あえて★★★1/2にとどめた見解もある。allmusic.comは短評だから幾分ものを含んだ言い回しになっていて、直訳しても意訳しても隔靴掻痒になりかねないからおそらく評者の意をパラフレーズすると、テナーサックスの使用自体が遅すぎた。アトランティック最終作でテナーの使用をするのは最後になって手詰まりを見せた観がある。テナー演奏そのものは良いのだが、楽曲が意外と枠にはまってきているのも露呈してしまった。
 オーネットの曲はAA'BA"32小節型式、AA'16小節型式、AB16小節型式、AA'B12小節型式(ブルース)など小唄型式の中で定型感を感じさせないのびのびしたテーマ・メロディとインプロヴィゼーションに良さがあったが、『オーネット・オン・テナー』ではあまりに性急にテーマが片づけられてしまうので、インプロヴィゼーション部が拡大した代わりにリスナーの聴き方がインプロヴィゼーションの自由度を楽しむより楽曲型式を聴きとる努力に向かってしまう。これもテナーによるインプロヴィゼーションに焦点を置きすぎたことから、逆に演奏のプレゼンテーションが粗雑になってしまった。

 オーネットの意図としてはアトランティック最終作でも意欲的な作品を制作することが念頭にあったと取りたいが、テナーサックスの使用からアルバムを発想した結果、目的と手段の転倒が起こった。おそらくオーネット自身にはその自覚がない。前作『オーネット!』では『フリー・ジャズ』で共演したスコット・ラファロがベースに起用され、結果はチャーリー・ヘイデンほどオーネットに合うベーシストはいないと改めて実感させるものだったが、ホーンのラインに張り合ってくるラファロの強引なベースは、あえて共演アルバムを制作するだけの意義はある緊張感を聴かせてくれた。
 ヘイデンがプライヴェートな問題でバンドに復帰できなくなり、ピアノレス・カルテットのレギュラー・バンドを組んで以来初めてベーシストに黒人プレイヤーのジミー・ギャリソンが参加した。アート・ファーマーベニー・ゴルソンのジャズテット出身で力量あるオーソドックスなベーシストだが、エド・ブラックウェルの不均衡なアクセントのドラムスとも、ブラックウェル以上にアクセントのランダムなオーネットのテナーともかかわりなくビートを進めていくので、ベースを基準にして聴くと粗雑なアンサンブルに聞こえるし、テナーやドラムスを基準に聴くとベースが平坦なばかりか推進力もなく聞こえる。カルテットの意思の統一ができていないのではないか。
 (ラファロ、ギャリソンについては後にオーネット自身が衝突があったことを回顧インタヴューで認めている)。

 だいたい以上のことを『オーネット・オン・テナー』は考えさせるアルバムで、このアルバム単体で聴けば文句なしにテナーサックスのフリー・ジャズ・アルバムの名作なのだが、初期オーネット・コールマンの作品系列の中ではオーネットの発想が陥りかねない弱点にもっとも近づいたアルバムに違いない。レギュラー・バンドを解散したオーネットは62年12月に新トリオでライヴを行い、正式にライヴ・レコーディングされるが、発表は新トリオが本格的に活動を始めた65年に持ち越された。ほぼ3年間、オーネットは活動を休止してしまうが、65年の活動再開はオーネットの音楽が新しい段階に入ったことを示すものだった。