人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

新編☆戦場のミッフィーちゃんと仲間たち(33)

 ところでなぜチェブラーシカがやみ酒を買いにここまで出向いてくるのかというと、チェブラーシカの住む町では未成年がお酒を買うと売ったお店も50万円以下の罰金に処せられるから売ってもらえないのです。なぜそんな罰則があるかというと、たばこ同様依存性が強いお酒は常に高い消費が見込めて高い税率でも売れるので安定した売り上げ税収が見込め、それには摂取によってトラブルをおこしやすい未成年者には販売を禁止して成年の飲酒人口を保つ必要があるためで、国家によるアルコール飲料や向精神効果のある薬物認可の独占化は国家に利益をもたらし、国家の利益=国民の利益という錯覚の浸透により経済の独占も人権の制限も、または人権の蹂躙さえ(他人事ならば)人民の支持を得る実例があります。誰しも法に不正はないと思うことで法により保護されている側にいると安心したくもあり、人民が国家にいつでも個人をひねり潰す強権を与えているのは、自分は蹂躙されない側にいる、と盲信しているからでもあります。
 そしてチェブラーシカがわざわざこの休戦地までやみ酒を買いに来るのは、ここがやみ物資特区だからと決まっていました。だいたいうちに来るお客さんは、とミッフィーちゃん、ワザとかかけひきとか、そうしたものがちょっと足りないわよね。持ち帰りの客は店内では飲んでいられない理由があるからで、当然店内価格も知りませんから、ミッフィーちゃんはアギーたちに持ち帰りの客に出す酒は水で薄めて、しかも店内価格よりも3倍あまりの売価で販売させていました。それでも気づいているのか気づかないのか、粗悪な水割りやみ酒を言い値で買っていくチェブラーシカらはいいカモでした。まったく、ありがたいカモでしたが(アギーたちは時たま罪悪感を抱くこともありましたが、うさぎだからすぐ忘れてしまうのです)、チェブラーシカとゲーナもシャパクリャクおばあさんにはさらに3倍に水で割り、差額をせしめているのです。でもシャパクリャクおばあさんは当然それには気づいていて、本来のアルコール度に濃縮してやみ市場で目玉の飛び出る値段で売りさばいていましたから、結局全員に利益がゆきわたることになります。シャパクリャクおばあさんから買った客だって業務用に使用、または転売してボロもうけしているに決まっているのですし、あからさまなねずみ講よりはやみ取引の限度に控えているだけ独占資本主義よりはましでした。