人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

新編☆戦場のミッフィーちゃんと仲間たち(64)

 チェブラーシカがわにのゲーナとハローキティの店でやみ酒を仕入れて外に出ると、通りを吹き抜ける風が頬に当たりました。風はしわくちゃの新聞紙を通りに吹き寄せていましたが、通りかかった野良犬がちょっと新聞紙の臭いを嗅ぐと、すぐに興味をなくして曲がり角に消えていきました。食い物を包んでいた新聞紙なんだな、とゲーナが言いました、おれは水の中しか鼻が利かないからわからないんだが。ぼくだってわからないよ、とチェブラーシカ、じかに鼻に持ってくれば少しは臭いも嗅げるかもしれないけど。大方ベーコンとかニシンの干物とか、だいたい燻製や乾物の類だろう、とゲーナ。シャパクリャクばあさんが知ったらそんなものまで仕入れてこさせられるかな、もっとも酒ほどボロ儲けになる闇市商売は、他にもないことはないがリスクが高すぎるからな。他のって?とチェブラーシカ。大人になればわかる、とゲーナ、それにあんまりあれこれ手を広げすぎると、商売がたきを作りかねない。酒のつまみ程度が関の山だろう。だったらぼくはビーフジャーキーがいいな、とチェブラーシカ、子どもだからお酒は飲めないけれど、ビーフジャーキーならいくらでも食べられるよ。
 結局おれたちはシャパクリャクばあさんの手下はやっているが、自分たちで商売となるとなかなか踏ん切りはつかないものだな、とわにのゲーナ。彼が思い描いていたのはミッフィー屋やキティ屋のような中途半端なものではなく、本物の女衒商売でした。つまり本当にアダルト対象のお店です。これだけはどこへ行っても需要があるはずなんだが、とゲーナには不思議でならないのでした。本当にそれだけに特化した店がとっくにあってもいいはずだ。それが存在しないということは、つまりそれを求める客もいないということか?
 しかしゲーナが観察したところ、二階に通じる怪しい階段があるのはどちらの店も同じでした。結局チャブ屋じゃないか。だがチャブ屋として儲かっているとはどうしても思えないような客ばかり出入りしているようにしか見えないのです。何か秘密があるはずだ、とゲーナは思いましたが、自分から探るより自然に向こうから内情を明かしてくるのを待つ方が得策でしょう。そのくらい、ゲーナは過去に痛い目にあってきもした慎重なわにでした。ですがゲーナにも、そろそろ何かに勝負を賭けてみたいところで、そうでなくてもこのままなのには、少々飽きてきていたのです。