人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

新編☆戦場のミッフィーちゃんと仲間たち(68)

 聞き捨てならないデイジーの発言に、チャブ屋ミッフィーズの空気にはにわかに殺気が立ちこめました。ある種のタイプの女性には公衆便所という古典的な差別的かつ女性蔑視的悪罵がありますが(男性に対してはそれに相当する蔑称がない分余計に差別的でもあります)、今このお店にいるどの女性も単に職業的に性的奉仕活動に従事しているだけで、それはスパイとともに最古の職業とされているほどです。ただし多くの国ではそれは文化的(宗教的・倫理的・思想的)に、また経済的に(徴税対象としての労働の実態が把握困難なため)公的には法的禁止が施行されており、それでも完全には防止できないため性的サーヴィスを隠蔽した形式の公式営業形態は許容せざるを得ない、というのが近代国家でのこの業種のあり方でした。まわりくどくてめんどくさいことですが、もぐら叩きのようなゲームと考えればどんな職業にも社会悪としての側面があります。それを思えばこのお店など可愛いもので、今さらデイジー貞操観念など言い出した真意を勘ぐれば、売れていないお店の女の子が売れているお店に嫌がらせを言いに来た、以外に考えられません。
 ただしミッフィーのお店のみんながデイジーたちの正体に気づいていたか、それはデイジーたちが名乗らなかったと同じくメラニーやウインたちもしらばっくれたか、あるいは気づいていないのかおたがいに事なかれ風にふるまっていましたから、何とも言えないことでした。すぐ顔に出る性格のアギーやバーバラですらポーカーフェイスのすまし顔でしたが、これはもっぱらデイジーが性を売り物の職業について抽象的な外郭から中傷した(デイジーにとっては自嘲的な誹謗でもありましたから、余計にそれはまわりくどい表現となったという事情もありますが)ためでもあり、要するにピンとこなかっただけかもしれません。
 その頃ぼくたち、つまりチェブラーシカとわにのゲーナは路上でコイントスをすると、コインは地面に落ちて道端の下水溝の中に落ちて行ってしまいました。しまった、コイントスなんかするんじゃなかったな、とわにのゲーナは言うと(わにだからって下水まで入るのは勘弁してほしいからな)、今日はどっちの店でやみ酒を仕入れるか別のやり方で決めることにしました。ゲーナの口の中にぼくが頭を入れる、気づいて通行人が踏まなければいつもとは別の店、気づかずに踏まれればぼく、チェブラーシカは死にます。