人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

Charles Mingus - Town Hall Concert (Jazz Workshop, 1964)

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Charles Mingus - Town Hall Concert (Jazz Workshop, 1964) : http://youtu.be/JP2XFKGKlAw
Recorded live at Town Hall, NYC, April 4, 1964
Released Jazz Workshop, 1964
(Side A)
A1. So Long Eric - 18:00
A2. Praying With Eric - 4:55
(Side B)
B1. Praying With Eric (Continued) - 22:07
(Compact Disc Release)
1. "So Long Eric" - 17:48
2. "Praying With Eric" (aka "Meditation") - 27:31
All songs written by Charles Mingus.
[Personnel]
Charles Mingus - Bass
Eric Dolphy - Alto Saxophone, Bass Clarinet, Flute
Johnny Coles - Trumpet
Clifford Jordan - Tenor Saxophone
Jaki Byard - Piano
Dannie Richmond - Drums

 このアルバムのリリースは1964年にはミンガス自身のレーベル、ジャズ・ワークショップでアメリカ国内では通信販売され、ドイツやオランダなどヨーロッパ諸国では一般流通したらしい。アメリカ国内で一般流通盤が発売されたのはミンガスが一時活動休止し、また復帰した1971年4月で、1966年1月のクラブ出演から70年3月のクラブ出演までは完全な休業状態で、70年10月にヨーロッパ・ツアーに出たのが本格的復帰となった。足かけ5年に渡る活動休止はかえってミンガスの活動を渇望する声を高めることになり、ヨーロッパや初の日本ツアーで録音を残したミンガスは大手のCBSコロンビアに迎えられてミンガス自身が望んでいたビッグバンド作品を3作残して絶賛を博し、ジョージ・アダムス(テナーサックス)とドン・プーレン(ピアノ)を迎えた最終クインテットの活動を基本に古巣アトランティック・レーベルで遺作までアルバム制作を続けることになる。
 この『タウン・ホール・コンサート』はエリック・ドルフィーの1964年6月の急逝を受けて発売されたもので、1964年春のヨーロッパ・ツアーの前に新セクステットのメンバーで披露されたコンサートでの録音になり、ジョニー・コールズ(トランペット)、エリック・ドルフィー(アルトサックス、フルート、バス・クラリネット)、クリフォード・ジョーダン(テナーサックス)、ジャッキー・バイヤード(ピアノ)、ミンガス、リッチモンドからなるこのセクステットはミンガス史上最強メンバーのバンドと名高い。コールズはギル・エヴァンス・オーケストラのレギュラー、ジョーダンはマックス・ローチ・カルテットのメンバーでもあった。ドルフィーとバイヤードはミンガスの音楽的要求に完璧に応えられるヴァーサタイルなミュージシャンで、曲としてはごくありふれたブルース『ソー・ロング・エリック』を6人がかりでスペクタクル溢れる演奏にしているのを聴けば、このバンドのものすごいテクニックと途方もない音楽的アイディアがわかる。できないことなどない感じなのだ。

 ミンガスの64年セクステットはその後『グレート・コンサート』『イン・ヨーロッパ』『リヴェンジ!』『コーネル1964』など10種あまりがリリースされ、平均的には2時間ほどのセット・リストで毎回入れ替え曲もあったのが判明した。ヨーロッパ公演ではどこの国でも放送局による公式ライヴ・レコーディングが行われていた。それほどチャールズ・ミンガスセクステットは注目され、人気の高いジャズ・アーティストだった。セクステットの音楽は十分注目に値するもので、ミンガスはバンドリーダー、作編曲家、ベーシストとして生涯の絶頂期にいた。それはセクステットのメンバーたちもそうで、ミンガスとリッチモンドはもとよりバンド全員がテレパシーで結ばれているようだ。ミンガスのアルバムだけ聴いていると普通にそれをこなしているように聴こえるが、当たり前に名盤と言われるようなジャズのアルバムを聴いてもミンガスのアルバムのような魔法は滅多にない。創造力ではミンガスに比肩しうるサン・ラでもサウンドの密度となるとミンガスのレヴェルと同等の作品は少ない、といえる。
 64年セクステットのレパートリーから『ソー・ロング・エリック』と『グッバイ・エリック(メディテーション)』を選んでアルバム化したのは、この2曲はどのコンサートでも不動のレパートリーだったからだった。『グッバイ・エリック』は後に『メディテーション』(または『メディテーションズ』)と正式名にされて何度も再演されるが、まるでプログレッシヴ・ロックみたいな組曲形式の30分近い曲で、おかげでアナログLP時代はAB面に泣き別れになっていた。プログレッシヴ・ロックみたいな、ではなくミンガスやマイルス、コルトレーンといったジャズマンの音楽があったからプログレッシヴ・ロックが生まれた、というのが正しい順序になる。

 ヨーロッパ公演に渡ったミンガス・セクステットはパリ公演の途中でジョニー・コールズが体調不良で倒れて先に帰国することになり、巡業終了後には帰国しても仕事のスケジュールがないバイヤードとドルフィーは単身ヨーロッパ巡業することになって、ミンガス、リッチモンド、ジョーダンだけが無事に帰国した。ドルフィーの健康状態が明らかに悪いので、メンバーたちの了解を得てドルフィーへは病院代分の割増手当てが出ることになったが、もう余命は2か月もなかった。コールズが帰国しクインテットになってからのツアー後半のライヴはエンヤ・レーベルからの『イン・ヨーロッパ』で聴けるが、セクステットでの演奏では『タウン・ホール・コンサート』の他にアメリカ30レーベルからのミンガス未公認の3枚組アルバム『グレート・コンサート』が1971年に発売されており、『グレート・コンサート』のCD化に対抗してミンガスの遺族が1996年に発売したのが『グレート・コンサート』の2日前のライヴ『リヴェンジ!』で、さらに現ブルー・ノート・レーベルのスタッフが渡欧前で『タウン・ホール・コンサート』の半月前の大学コンサートの音源を発掘したのが『コーネル1964』だった。ヨーロッパ公演からの発掘ライヴは10種あまり出ていたが、渡欧前のセクステットの発掘ライヴは『タウン・ホール』以来初めてだったから大きな話題になった。
 このセクステットは『コーネル1964』『タウン・ホール・コンサート』『リヴェンジ!』『グレート・コンサート』と、2か月あまりのうちに傑作ライヴ・アルバムを4作残したのだが、ドルフィーには本当に最晩年の音楽活動になってしまったし、ミンガス含めメンバー全員が生涯のベスト・プレイを極めてしまった点では運命的なセクステットだった。仮にドルフィーが早逝していなかったらミンガスとの再共演でこれ以上のものが残せただろうかと考えても、ちょっと想像がつかない気がする。残る3作の曲目データを掲げる。

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[Charles Mingus Sextet with Eric Dolphy Cornell 1964]
Recorded March 18, 1964 at Cornell University
Released Blue Note Records, 2007
(CD1)
1. "Opening" - :16
2. "Atfw You" (Byard) - 4:26
3. "Sophisticated Lady" (Ellington, Mills, Parish) - 4:23
4. "Fables of Faubus" - 29:41
5. "Orange Was the Colour of Her Dress, Then Blue Silk" - 15:05
6. "Take the 'A' Train" (Strayhorn) - 17:26
(CD2)
1. "Meditations" - 31:23
2. "So Long Eric" - 15:33
3. "When Irish Eyes Are Smiling" (Chauncey Olcott, George Graff Jr., Ernest Ball) - 6:06
4. "Jitterbug Waltz" (Waller) - 9:58
All pieces composed by Charles Mingus except as noted.

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[Charles Mingus - Revenge!]
Recorded April 17, 1964 at the Salle Wagram in Paris, France
Released Revenge 32002, 1996
(Disc One)
1. "Peggy's Blue Skylight" - 12:53
2. "Orange Was the Color of Her Dress, Then Blue Silk" - 11:38
3. "Meditations on Integration" - 22:39
4. "Fables of Faubus" - 24:53
(Disc 2)
1. "So Long Eric" - 28:50
2. "Parkeriana" - 24:13
All pieces composed by Charles Mingus.

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[The Great Concert Of Charles Mingus ]
Recorded at the Theatre des Champs-Elysees, Paris on the 19th April 1964.
?Released America Records, 30 AM 003-004-005, 1971
A1. Introduction And Presentation - 1:35
A2. Good Bye Pork Pie Hat (aka So Long Eric) (1ere Partie) - 23:30
B1. Good Bye Pork Pie Hat (aka So Long Eric) (2 Partie) - 5:40
B2. Orange Was The Colour Of Her Dress - 14:00
C1. Parkeriana - 23:00
D1. Meditation For Integration - 27:30
E1. Fable Of Faubus (1ere Partie) - 17:20
F1. Fable Of Faubus (2e Partie) - 11:20
F2. Sophisticated Lady (Ellington, Mills, Parish) - 6:00
All pieces composed by Charles Mingus except as noted.