人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

蜜猟奇譚・夜ノアンパンマン(23)

決断疲れ
 (判断疲れ、決定疲れ)とは、意思決定と心理学の分野において、意思決定を長時間くり返した後に個人の決定の質が低下する現象を指します。これは、現在では不合理な意思決定の原因の一つとして理解され、職務中の裁判官を例にとると、午前中より午後に好意的な判決が少なくなることが明らかになっています。決断疲れは、消費者に本来必要でない物を購入させるなど、粗末な選択をさせることにもつながるでしょう。選択肢のない人々はそれを望み、そのために戦うこともよくあるはずですが、多くの決断を下すことに(心理学でいう)嫌悪感を覚えうることにパラドックスがあるのです。
 両立しないものの間の妥協、いわゆるトレードオフは高度でエネルギー消耗の激しい意思決定です。精神的にすりきれた人はトレードオフに対して億劫になったり、大変粗末な選択を行います。決断疲れがどのように人をセールに弱くし、またセールの時間の設定にどのようにマーケティング戦略がデザインされるべきかも、決断疲れによって説明できるのです。
 また、経済的なトレードオフを常に迫られることで生じる決断疲れが人々を貧困層に押し留める大きな要因であるとする根拠として、もし経済状況が貧者にとても多くのトレードオフを迫るとすれば、貧者は他の活動に使う精神的エネルギーがほとんどなくなってしまいます。スーパーへの外出が、各商品により多くの心的トレードオフを要することから、もし富裕層より貧困層の決断疲れをより早めるとすれば、レジに至るまでに貧困層はチョコバーとフルーツキャンディに抵抗する意志力をほとんど失っていることになります。これらの商品は衝動買いと呼ばれるに違いありません。
 さらに、決断疲れにより決断を全くしない状態に陥ることがあり、これを決断忌避と呼びます。より多くの選択肢がある人の方が何も買わない決断に消極的で、少数から選んだ場合より多数から選んだ場合のほうが最終的な満足度は低いという統計分析があり、これは選択という行為が、つねに選択肢の中から大きな意思決定を行うことを求める限り、重荷になり、ついには反生産的にもなりうることを示唆しているでしょう。トレードオフと意思決定の感情的コストを回避するために使われる決断忌避の方法には、可能なら既定のもの、または現状維持を選ぶ、などがあります。
 その頃、乳頭となったアンパンマンはまさにこんな状態にありました。