人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

新☆戦場のミッフィーちゃんと仲間たち(26)

 前向きに検討してみるわ、とミッフィーちゃんは苦しまぎれに返答しましたが、まさか身内から営業権を手離そうなんていう話が出てくるとは、とアトピー疥癬でも診るような目つきでメラニーの表情を読み取ろうとしました。するとメラニーはさりげなく片手で自分の目もとを隠しましたが、見えている顔の下半分はどう見ても笑いをこらえているように見えました。わざとほくそ笑んでいる表情を、目だけ隠して見せつけているんだわ。だとしたら、いましがた口にしたばかりのことだって、いったい本当はどこまで本気なのかわからない。動揺させ、気落ちさせるようなことを言って反応を楽しんでいるのかもしれない。ひょっとしたらこれは一種の陽動で、こちらから何かボロが出るのを予想して揺さぶっているのかもしれない。かまをかけている、ってやつ。たちが悪いのは、この話がメラニー個人の考えなのか、メラニーが店のみんなの意見を代表して述べているのかもよくわからない、ということ。わざわざ1対1になる状況を作って話を持ち出してきたのも、その判別には役に立たない。
 強いてわかることと言えば、とミッフィーちゃんは考えました、他の子がいないサシになった場面でこの話を持ち出したこと自体にメラニーの狙いがあること。メラニーはこういう場合ぜったい彼女自身に有利な状況を選ぶに違いないけれど、二人きりの密談であることがミッフィーにとっても好都合だと暗に匂わせているのに違いない。つまりトップであるミッフィーの決断次第で最善の策が決まること、メラニーが相談相手になる以上それは独断ではないしミッフィー個人が利するためでもないこと。そういう風に誘導していく気なのに違いない、としか思えませんでした。
 ただしこれらはすべて正反対のやり口とも考えられるので、つまり左右どちらにもものごとが振れると予期される時に、本来の保守派が先に現状改革的な指向の強い選択肢を強く推してしまうという手口もあります。するとそれに対して本来の改革推進派の方が急進的な方策について慎重になりますから、保守派の方では改革案を修正するとともに本題からは隠蔽させていた別の目的の方も承認させてしまう。これもよくあるやり口で、しかも決着がつくまでいくらでも修正していけばいいのですからほぼ先手必勝の手口です。
 ならば素直に出るしかないでしょう。みんなの意見も聞かないと、とミッフィーちゃんは答えました。