人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

蜜猟奇譚・夜ノアンパンマン(33)

 なんでばいきんまんなんだよ!とカレーパンマンは縛り上げられたまま、無駄に地団駄を踏みました。ドキンちゃんもいまーす、とバタコさんの仮装を解いてドキンちゃんも正体を現しました。まさかチーズも?ハヒヒのヒー、とばいきんまんはチーズの耳をつかんで引っ張ると、現れたのはかびるんるんでした。なら本物のジャムおじさんたちをどこに隠したんだ!とカレーパンマンは叫びましたが、最初から入れ替わっていたんなら、アンパンマンがこんな具合になってしまったというのもばいきんまんたちの作り話なんだな、とようやく納得がいったように思いました。ジャムおじさんたちはどこにいるんだ!?それに、アンパンマンをいったいどこにやったんだ!?
 教えるもんか、とばいきんまんはせせら笑うと、最初からお前らはだまされていたのだ、と会心破顔一笑で、さーてどう料理してやろうかな、と揉み手をして喜びを抑えきれない様子でした。カレーパンマンはいつからばいきんまんたちがジャムおじさんたちと入れ替わっていたのかわかりませんでしたが、自分が縛りつけられているこの乳頭がアンパンマンの変化などではなく、ばいきんまんの用意していたデコイならば簡単な脱出策があります。カレーパンマンの必殺技、相手には致命的なダメージを与えられるカレーファイヤーという全身炎上攻撃があり、これを使えばカレーパンマンを縛りつけているこの人間大乳頭などロープもろとも焼きつぶしてしまえるでしょう。
 しかしうかつにこの技が使えないのは、カレーパンマン自身にもすさまじいダメージがあることです。相討ち覚悟の攻撃なので、拘束から自由になり、ばいきんまんをひるませることはできても、さらに自力でばいきんまんたちを撃破することは難しい。せいぜいサポートくらいの役にしかたてない。そうなると、しょくぱんまんがパンの配達とパトロールから帰ってくるまで待たなければなりません。
 カレーパンマンは気が短いので、もどかしさのあまり抱きつくような格好で縛りつけられたこの乳頭にやつあたりするようにきつく抱きしめました。すると乳頭は、本物の乳首がつねり上げられるように悩ましげなうめき声をあげるのです。ばいきんまんはこんなもの作ってどういうつもりだ!?とカレーパンマンは再び怒りがこみ上げました。
 しかしカレーパンマンは勘違いしていたのです。この乳頭は変化したアンパンマンそのものだったのですから。