人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

J・A・シーザー・リサイタル - 国境巡礼歌 (ビクター, 1973)

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J・A・シーザー・リサイタル - 国境巡礼歌 (ビクター, 1973) FullAlbum : http://youtu.be/nxl6yHFv8To
Recorded Live at 日本青年館ホール, February 3, 1973
Released by 日本ビクター株式会社 Victor SJX-130, May 1973
Produced & Directed by 寺山修司
(Side A)
A1. 越後つついし親不知 (作詩・作曲;J・A・シーザー) - 5:29
A2. 転生譚 (作曲;J・A・シーザー) - 4:14
A3. 母恋しやサンゴ礁 (作詩・作曲;J・A・シーザー) - 4:34
A4. 狂女節 (作曲;J・A・シーザー) - 2:56
A5. 英明詩篇 (作曲;J・A・シーザー) - 2:51
A6. 和讃 (作曲;J・A・シーザー) - 7:30
(Side B)
B1. 人力飛行機の為の演説草案 (作詩;寺山修司・作曲;J・A・シーザー) - 6:22
B2. 民間医療術 (作詩;寺山修司・作曲;J・A・シーザー) - 11:46
B3. 大鳥の来る日 (作詩;寺山修司・作曲;J・A・シーザー) - 7:51
[ J・A・シーザー・リサイタル ]
J・A・シーザー - エレクトーン、ギター、琴、和太鼓
河田悠三 - ベース・ギター
稲葉憲仁 - ティンパニ
藤原薫 - 手製楽器
鈴木茂行 - ドラムス
森崎偏陸 - 笛
林恭三 - コンガ
森岳史 - リード・ギター
佐々木秀司 - コンガ
磯貝重夫 - ドラ
山城邦夫 - 竹
新高恵子 - 合唱、歌詩朗読
昭和精吾 - 合唱、歌詩朗読
佐々木英明 - 合唱、歌詩朗読
蘭妖子 - 歌唱指導、合唱、歌詩朗読、三味線
他8名合唱
小野正子、他7名 - 舞踏
(Original Victor "国境巡礼歌~J・A・シーザー・リサイタル" LP Liner Cover)

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 今回は鈴木慶一ムーンライダースのアルバム『火の玉ボーイ』を予定していました。ところが先ほど確認してみるとリンク先が削除されているではありませんか。これです。
鈴木慶一ムーンライダース - 火の玉ボーイ (ワーナー/エレクトラ, 1976) Full Album : http://youtu.be/N3x5drwNt1k
なので、前回のはちみつぱいとの関連アルバムではありませんが、はちみつぱいの唯一のアルバム『センチメンタル通り』1973.11と同年に発売された日本のロック・アルバムからJ・A・シーザーの唯一のアルバム(J・A・シーザー・リサイタル名義)である本作をご紹介することにしました。
1948年に宮崎県で生まれたシーザー(もちろんシーザーは芸名で、本籍は日本名の日本人です)は14歳で家出少年となり、1969年に寺山修司の劇団・天井桟敷に参加。もっともシーザーの経歴は寺山修司の創作による設定らしいので、天井桟敷参加までは詳述する必要もないでしょう。そしてシーザーは「J・A・シーザーと悪魔の家」として天井桟敷の座付けバンドになりました。寺山逝去による1983年の解散まで天井桟敷の全公演の音楽を担当し、天井桟敷改め劇団・万有引力では座長に就任しました。70年代のアルバムは5枚あります。
1. 天井桟敷/呪術音楽劇「邪宗門(ビクター, 72.4)
2. 国境巡礼歌~J・A・シーザー・リサイタル (ビクター, 73.5)
3. 田園に死す」オリジナル・サウンドトラック (CBSソニー, 74.12)
4. 天井桟敷/阿呆船 (コロムビア, 77.1)
5. 天井桟敷/身毒丸 (ビクター, 78.9)
このうち天井桟敷の3枚は演劇の実況録音ですし、「田園に死す」は寺山の映画のサウンドトラックですから、純粋にシーザーのオリジナル・ロック・アルバムといえるものはこの『国境巡礼歌』が唯一のものになります。アルバムは寺山修司のプロデュースと演出による、演劇性の強いスペシャル・コンサートのライヴ録音になりました。
音楽性は同時代の西ドイツのアモン・デュールIIを連想させるヘヴィでサイケなプログレッシヴ・ロックで、当時日本のロック・シーンからは孤立していたのも納得のいくものです。シーザーの音楽は天井桟敷よりもっと小規模な万有引力の活動中に長らく忘れられていましたが、1998年~2000年のアニメ『少女革命ウテナ』の音楽担当と7枚のサウンドトラックで世界中のサイケデリックサウンド・マニアから注目され、70年代のシーザーのアルバムは日本サイケデリック・ロックの古典と見做されるようになりました。イギリスのジュリアン・コープによる研究書『Japrock Sampler』2007ではシーザーに1章が割かれ、同書による日本のロック・トップ50では『国境巡礼歌』は5位にランクされています(1位フラワー・トラヴェリン・バンド『SATORI』、2位スピード・グルー&シンキ『イヴ-前夜』、3位裸のラリーズ『Live '77』、4位ファー・イースト・ファミリー・バンド『多元宇宙への旅』)。日本語がわからなければもっと楽しめるアルバムなのかもしれません。以上でご紹介を終わりにします。
(Original Victor "国境巡礼歌~J・A・シーザー・リサイタル" LP Side A/B Label & Lyric Sheet)

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