エイプリル・フール Apryl Fool - エイプリル・フール Apryl Fool (日本コロムビア, 1969) Full Album : https://youtu.be/7u6QHCk6GOo
Released by 日本コロムビア YS10068J, September 27, 1969
Photography by 荒木経惟
Produced, Arranged by The Apryl Fool
(Side A)
A1. Tomorrow's Child - 4: 27
A2. Another Time - 7: 19
A3. 人間神話の崩壊 April Blues - 4: 14
A4. 組曲:母なる大地 I The Lost Mother Land (Part 1) - 7:18
(Side B)
B1. Tanger - 4: 30
B2. Pledging My Time (Bob Dylan) - 3: 42
B3. 暗い日曜日 Sunday - 6: 05
B4. 聡明な死が示す怪奇な魅惑的な趣味の象徴 Honky Tonk Jam - 1: 58
B5. 組曲:母なる大地 II The Lost Mother Land (Part 2) - 2:25
[ エイプリル・フール Apryl Fool ]
小坂忠 - Lead Vocals,作詩(A1,B1), 作曲(A2)
柳田博義 - Keyboards, 作曲(A3,B4)
菊池英二 - Lead Guitar, 作曲(A1,A4,B5)
細野晴臣 - Bass, 作曲(A2,B1,B3)
松本零 - Drums, 作詩(A2,A4,B4,B5)
このアルバムは純粋に歴史的な価値からLP時代~CD時代を通して再発売され続け、2002年には韓国盤、2010年にはイギリス盤、2015年にはベルギー盤、オーストリア盤、ロシア盤の発売も確認されています。エイプリル・フールの前身は2枚のシングルを残したザ・フローラルで小坂、柳田、菊池が在籍していたグループ・サウンズ後期のグループであり、ベースに細野、ドラマーが松本に交替してグループ・サウンズ時代終焉直後に現れたニュー・ロックの先駆的バンドのひとつとなりました。エイプリル・フールが記憶されるバンドになったのは細野晴臣と松本零改め松本隆が1969年10月から大瀧詠一、鈴木茂と組んだはっぴいえんどの古典的アルバムによります。
残るメンバー中、柳田博義は柳田ヒロ名義でフォーク/ロック系でキーボードの売れっ子セッションマンになり、柳田ヒロ名義のアルバムもリリースします。実力派ヴォーカリストの小坂忠は細野晴臣らのバックアップでカントリー・ロック系のソロ・シンガーに転向し、70年代半ばにはソウル・ミュージックに方向を変え、その後は商業音楽から脱してクリスチャン・ミュージック(音楽伝道師)に献身することになります。ギタリストの菊池英二は90年代にジャズ系アーティストの写真家になったようです。
(Reissued '76 Nippon Columbia/Blow Up "Apryl Fool" LP Front Cover)
荒木経惟のB/W写真が素晴らしいジャケット・アートから期待されるのは相当アンダーグラウンドな音楽性を持ったバンドだろう、というところで、実際1969年にこのサウンドはブルース・ロックとサイケデリック・ロックをつないだ初期のプログレッシヴ・ロックとして最大公約数的なものでしょう。バンドの狙いは実現されているので、技術的な拙さはそれほど感じません。ただし楽曲のつまらなさ、アイディアの貧困さと安易さが本作を単なる歴史的作品にとどめています。
楽器として及第点なのはB1「Tanger」とB3「暗い日曜日」の2曲で、どちらも松本=細野コンビの作品になりますが、この2曲はアルバムの中では浮いており、はっぴいえんどのためのデモ・テイクのように聞こえるのです。アルバム『エイプリル・フール』のカラーは菊池・柳田による曲にありますが、菊池・柳田の曲はプログレッシヴ・ロックに足をかけた中途半端なブルース・ロックとサイケデリック・ロックのできそこないと言わざるをえないでしょう。
(Reissued '76 Nippon Columbia/Blow Up "Apryl Fool" LP Liner Cover)
菊池英二のギタリストのキャリアがここまでだったのは演奏面でも提供曲でも止むなしと感じられ、提供曲は作曲者がアレンジのイニシアチヴを取るのが通例ですから、「組曲:母なる大地 I」「II」のやりすぎのヴォーカル・エフェクトは楽曲を最悪のアレンジで提示しています。柳田博義が有能なセッションマンになるのはエイプリル・フール解散後で、タイトルからして悪趣味な(松本零の命名かもしれませんが)2曲のインスト「人間神話の崩壊」「聡明な死が示す怪奇な魅惑的な趣味の象徴」は内容の乏しいブルース・セッションです。
良い曲に欠けているのが本作の致命的な欠点ですが、少なくとも細野、松本、柳田、小坂にとってはこの不満足なアルバムが転機となって明確な方向性へ発展的解散をもたらしたと思えます。バンドが解散後の1974年4月に吉田喜重監督作品『エロス+虐殺』(前月公開)のサントラ、一柳慧(小野洋子の初婚相手、現代音楽家)によってEP『エロス+虐殺』が発売され、A面は一柳慧作品ですがB面は末期のエイプリル・フールのインストル・ナンバー「ジャズ・ロック」が聴けます。ピンク・フロイド的ではありますが『エイプリル・フール』より格段の進歩が見られ、この路線で第2作が作らたらエイプリル・フールは名実ともに名を残すバンドになったでしょう。すでに細野、松本ははっぴいえんどを結成していたのが惜しまれます。
映画『エロス+虐殺』予告編 Eros Plus Massacre Trailer : https://youtu.be/NWVrSxivE1Y
Released by 日本コロムビア YS10068J, September 27, 1969
Photography by 荒木経惟
Produced, Arranged by The Apryl Fool
(Side A)
A1. Tomorrow's Child - 4: 27
A2. Another Time - 7: 19
A3. 人間神話の崩壊 April Blues - 4: 14
A4. 組曲:母なる大地 I The Lost Mother Land (Part 1) - 7:18
(Side B)
B1. Tanger - 4: 30
B2. Pledging My Time (Bob Dylan) - 3: 42
B3. 暗い日曜日 Sunday - 6: 05
B4. 聡明な死が示す怪奇な魅惑的な趣味の象徴 Honky Tonk Jam - 1: 58
B5. 組曲:母なる大地 II The Lost Mother Land (Part 2) - 2:25
[ エイプリル・フール Apryl Fool ]
小坂忠 - Lead Vocals,作詩(A1,B1), 作曲(A2)
柳田博義 - Keyboards, 作曲(A3,B4)
菊池英二 - Lead Guitar, 作曲(A1,A4,B5)
細野晴臣 - Bass, 作曲(A2,B1,B3)
松本零 - Drums, 作詩(A2,A4,B4,B5)
このアルバムは純粋に歴史的な価値からLP時代~CD時代を通して再発売され続け、2002年には韓国盤、2010年にはイギリス盤、2015年にはベルギー盤、オーストリア盤、ロシア盤の発売も確認されています。エイプリル・フールの前身は2枚のシングルを残したザ・フローラルで小坂、柳田、菊池が在籍していたグループ・サウンズ後期のグループであり、ベースに細野、ドラマーが松本に交替してグループ・サウンズ時代終焉直後に現れたニュー・ロックの先駆的バンドのひとつとなりました。エイプリル・フールが記憶されるバンドになったのは細野晴臣と松本零改め松本隆が1969年10月から大瀧詠一、鈴木茂と組んだはっぴいえんどの古典的アルバムによります。
残るメンバー中、柳田博義は柳田ヒロ名義でフォーク/ロック系でキーボードの売れっ子セッションマンになり、柳田ヒロ名義のアルバムもリリースします。実力派ヴォーカリストの小坂忠は細野晴臣らのバックアップでカントリー・ロック系のソロ・シンガーに転向し、70年代半ばにはソウル・ミュージックに方向を変え、その後は商業音楽から脱してクリスチャン・ミュージック(音楽伝道師)に献身することになります。ギタリストの菊池英二は90年代にジャズ系アーティストの写真家になったようです。
(Reissued '76 Nippon Columbia/Blow Up "Apryl Fool" LP Front Cover)
荒木経惟のB/W写真が素晴らしいジャケット・アートから期待されるのは相当アンダーグラウンドな音楽性を持ったバンドだろう、というところで、実際1969年にこのサウンドはブルース・ロックとサイケデリック・ロックをつないだ初期のプログレッシヴ・ロックとして最大公約数的なものでしょう。バンドの狙いは実現されているので、技術的な拙さはそれほど感じません。ただし楽曲のつまらなさ、アイディアの貧困さと安易さが本作を単なる歴史的作品にとどめています。
楽器として及第点なのはB1「Tanger」とB3「暗い日曜日」の2曲で、どちらも松本=細野コンビの作品になりますが、この2曲はアルバムの中では浮いており、はっぴいえんどのためのデモ・テイクのように聞こえるのです。アルバム『エイプリル・フール』のカラーは菊池・柳田による曲にありますが、菊池・柳田の曲はプログレッシヴ・ロックに足をかけた中途半端なブルース・ロックとサイケデリック・ロックのできそこないと言わざるをえないでしょう。
(Reissued '76 Nippon Columbia/Blow Up "Apryl Fool" LP Liner Cover)
菊池英二のギタリストのキャリアがここまでだったのは演奏面でも提供曲でも止むなしと感じられ、提供曲は作曲者がアレンジのイニシアチヴを取るのが通例ですから、「組曲:母なる大地 I」「II」のやりすぎのヴォーカル・エフェクトは楽曲を最悪のアレンジで提示しています。柳田博義が有能なセッションマンになるのはエイプリル・フール解散後で、タイトルからして悪趣味な(松本零の命名かもしれませんが)2曲のインスト「人間神話の崩壊」「聡明な死が示す怪奇な魅惑的な趣味の象徴」は内容の乏しいブルース・セッションです。
良い曲に欠けているのが本作の致命的な欠点ですが、少なくとも細野、松本、柳田、小坂にとってはこの不満足なアルバムが転機となって明確な方向性へ発展的解散をもたらしたと思えます。バンドが解散後の1974年4月に吉田喜重監督作品『エロス+虐殺』(前月公開)のサントラ、一柳慧(小野洋子の初婚相手、現代音楽家)によってEP『エロス+虐殺』が発売され、A面は一柳慧作品ですがB面は末期のエイプリル・フールのインストル・ナンバー「ジャズ・ロック」が聴けます。ピンク・フロイド的ではありますが『エイプリル・フール』より格段の進歩が見られ、この路線で第2作が作らたらエイプリル・フールは名実ともに名を残すバンドになったでしょう。すでに細野、松本ははっぴいえんどを結成していたのが惜しまれます。
映画『エロス+虐殺』予告編 Eros Plus Massacre Trailer : https://youtu.be/NWVrSxivE1Y