人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

グレイトフル・デッド Grateful Dead - ライヴ・デッド Live/Dead (Warner, 1969)

イメージ 1

グレイトフル・デッド Grateful Dead - ライヴ・デッド Live/Dead (Warner, 1969) Full Album : https://youtu.be/aL-dUZJydcw
Recorded Live at the Avalon Ballroom, January 26, 1969(B2,C1); the Fillmore West, February 27, 1969(A1,B1); at the Fillmore West, March 2, 1969(D1,D2,D3).
Released by Warner Brothers Records, Warner Bros.-Seven Arts 2WS-1830, November 10, 1969 / US#64(Billboard), RIAA-Gold(August 24, 2001)
(Side one)
A1. Dark Star (Jerry Garcia, Mickey Hart, Robert Hunter, Bill Kreutzmann, Phil Lesh, Ron "Pigpen" McKernan, and Bob Weir) - 23:18
(Side two)
B1. St. Stephen (Garcia, Hunter, and Lesh) - 6:31
B2. The Eleven (Hunter and Lesh) - 9:18
(Side three)
C1. Turn On Your Love Light (Deadric Malone and Joseph Scott) - 15:05
(Side four)
D1. Death Don't Have No Mercy (Reverend Gary Davis) - 10:28
D2. Feedback (Tom Constanten, Garcia, Hart, Kreutzmann, Lesh, McKernan, and Weir) - 7:49
D3. And We Bid You Goodnight (Traditional, arr. by Grateful Dead) - 0:35
(2001/2003 reissue bonus tracks)
8. Dark Star (single version) (Garcia, Hunter) - 2:45
9. "Live/Dead radio promo" 1:01
[ Grateful Dead ]
Tom Constanten - organ
Jerry Garcia - guitar, vocals
Mickey Hart - drums, percussion
Bill Kreutzmann - drums, percussion
Phil Lesh - electric bass, vocals
Ron "Pigpen" McKernan - vocals, congas, organ on "Death Don't Have No Mercy"
Bob Weir - guitar, vocals

 サンフランシスコ出身のグレイトフル・デッドについては先日3月15日の記事で初期の代表作『アオクソモクソア』"Aoxomoxoa"1969をご紹介しました。デッドは'60年代後半のアメリカ西海岸のヒッピー文化を象徴する存在としてジェファーソン・エアプレイン、クイックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィスと並ぶサンフランシスコ3大バンドとされ、活動期間はもっとも長く、1980年代~1990年代にも英米のロック・バンドではローリング・ストーンズに次ぐライヴ興行収益を記録する驚異的な人気を誇りました。レコード制作では地味なバンドで、オリジナル・メンバーが揃っていた第1期グレイトフル・デッドのアルバムは、
1. The Grateful Dead (1967)US73#(Billboard)
2. Anthem of the Sun (1968)US87#(Billboard)
3. Aoxomoxoa (1969)US73#(Billboard)
4. Live/Dead (1969, 2LP, Live)US64#(Billboard)
5. Workingman's Dead (1970)US27#(Billboard)
6. American Beauty (1970)US30#(Billboard)
7. Grateful Dead (Skull & Roses) (1971, 2LP, Live)US25#(Billboard)
8. Europe '72 (1972, 3LP, Live)US24#(Billboard)
 までになります。メンバーの急死に伴うメンバー・チェンジやレーベル移籍のために1970年のライヴからの発掘録音、
9. History of the Grateful Dead, Volume One (Bear's Choice) (1973, Live)US60#(Billboard)
 が中継ぎに発売され、新生グレイトフル・デッドは次のアルバム、
10. Wake of the Flood (1973)US18#(Billboard)
 から活動を再開します。

(Original Warner Bros.-Seven Arts "Live Dead" Liner Cover, Inner Lyric Sheet & Side 1 Label)

イメージ 2

イメージ 3

イメージ 4

イメージ 5

 グレイトフル・デッドは短命グループならともかく活動が順調だったバンドとしてはスタジオ作品が少なく、オリジナル・メンバー期にはスタジオ盤5作に対してライヴ盤3作、しかもライヴ盤のLP枚数は2枚組以上になるため枚数ではスタジオ盤5枚に対してライヴ盤7枚なのは、録音技術の発達でスタジオ録音ならではの完成度を求める傾向があった当時のロック・バンドとしては異例でした。しかしデッドは新しい録音技術をライヴ録音に応用していたので、本作『Live/Dead』は16トラック・レコーダーでマルチ録音された初のロックのライヴ・アルバムとしても記憶されるものです。優れた音質とミキシングはスタジオ録音と何ら遜色なく、巧みな編集によって各曲が高い完成度に仕上げられています。また本作『Live/Dead』は初期3作までのデッドを締めくくる作品でもありました。続く1970年のスタジオ盤『Workingman's Dead』『American Beauty』はよりルーツ・ロック色を強め、ようやくヒット・アルバムといえるセールスを記録します。ほぼ同時デビューのロサンゼルスのバンド、ザ・ドアーズがデビュー作から全アルバムをトップ10入りさせ、No.1シングルも3曲あるのに較べるとグレイトフル・デッドはまったく対照的な位置にあるグループでした。ドアーズの唯一のライヴ・アルバム『Absolutely Live』は優れたものですが、ドアーズの場合は作品性の高さからやはりスタジオ盤に傑作があります。
 オリジナル・メンバー期のグレイトフル・デッドは『Live/Dead』『Grateful Dead (Skull & Roses)』『Europe '72』の3組のライヴ・アルバムに本領があると言ってよく(スタジオ盤も代表曲が並んだ重要なものですが)、本作もスタジオ版が先に発表されたのは『Aoxomoxoa』からの「St. Stephen」とシングルのみで発売された「Dark Star」だけです。シングルでは2分45秒しかない「Dark Star」がライヴでは23分を越えてさらにフェイド・アウトしていくように、デッドの長時間演奏は演奏するたびに即興的に構成まで自在に変化する本来的なインプロヴィゼーションの域に踏みこんでおり、即興といってもアドリブの次元に止まる大多数のバンドとは一線を画したものでした。それは同時代のイギリスのソフト・マシーンに代表されるジャズ・ロックのような構築的なものとも違っており、革新性を主張するものでは決してない替わりに古びることもないもので、今なお発掘ライヴ・アルバムが毎年のように発売されては全アルバムがロング・セラー(『Live/Dead』が全米レコード協会=RIAA認定ゴールドディスクに登録されたのは発売後32年経った2001年です)を続けているのです。