映画日記2017年11月1日~3日/ラオール・ウォルシュ(Raoul Walsh, 1887-1980)の活劇映画(1)
ラオール・ウォルシュ(Raoul Walsh, 1887-1980)はアメリカ映画のハリウッド創設以前、1910年にエディスン映画社から独立した映画創始期の名門、バイオグラフ社に入社して映画界入りした人で、バイオグラフの看板監督D・W・グリフィス(1875-1948)の下で助監督・俳優として修業時代を過ごしました。グリフィスが独立制作してアメリカ映画史上画期的な長編映画になった『国民の創生』'15、『イントレランス』'16でも助監督・俳優を勤めましたが、『国民の創生』と同年末には初の長編映画『リゼネレーション(更生)』を世に送っています(短編映画の監督作品は1913年からあり)。同時期にグリフィス門下生だったエーリヒ・フォン・シュトロハイム(1885-1957)の監督デビューが1919年ですからウォルシュの方が先輩になります。シュトロハイムが1919年~1929年に8本の監督作品を残したきり映画監督としてのキャリアを断たれ俳優専業に転向せざるを得なかったのに較べ、ウォルシュは1913年の監督デビューから引退作品になった1964年の『遠い喇叭』までの50年間で、生涯の監督作品が138本に及ぶ多作家になりました。同時代でウォルシュと並ぶほど映画創始期からの長いキャリアと監督作品数を誇る監督はセシル・B・デミル、ヘンリー・キング、ジョン・フォード、キング・ヴィダーくらいしか見当たらず、またアラン・ドワンという人もいますが、ウォルシュの場合はサイレント初期から引退作品に至るまで映画の青春時代を生きていたような、若々しさを保ち続けた映画監督でした。その一面、娯楽映画の監督で一貫していたため一流であり巨匠であっても職人監督以外の視点からは評価されない時代が長かった人でもあります。早くからウォルシュの作風と個性に着目し、ウォルシュ作品の素晴らしさを賞賛していたのが淀川長治氏であり、ハワード・ホークスと並んで評価が進んだのはようやく'70年代になってからのことでしたがまだ市販映像ソフトの時代ではなく、VHSヴィデオ~DVDの普及によってやっと数多くのウォルシュ作品が観られるようになったと言っていいでしょう。つい30年前まではラオール・ウォルシュの映画が観られるのはたまにあるテレビ放映か、スクリーン上映では国立フィルムセンターのアメリカ古典映画特集、アテネ・フランセのような語学学校しかなかったのです。ウォルシュの映画は2017年現在『バグダッドの盗賊』'24(1996年度登録)、『リゼネレーション』'15(2000年度登録)、『白熱』'48(2003年度登録)、『ビッグ・トレイル』'30(2006年度登録)の4作がアメリカ国立フィルム登録簿登録作品になっており、ジョン・フォードやハワード・ホークスに較べれば少ないですが4作登録でも大したものですし、ウォルシュ作品からは今後も『栄光』'26、『港の女』'28、『藪睨みの世界』'29、『金髪乱れて』'32、『バワリー』'33、『アメリカの恐怖』'36、『画家とモデル』'37、『セント・ルイス・ブルース』'39、『彼奴は顔役だ!』'39、『ハイ・シェラ』'41、『壮烈第七騎兵隊』'41、『いちごブロンド』'41、『大雷雨』'41、『決死のビルマ戦線』'45、『傷だらけの勝利』'45、『追跡』'47、『高原児』'47、『死の谷』'49、『遠い太鼓』'51、『艦長ホレーショ』'51、『海賊黒ひげ』'52、『決斗!一対三』'53、『裸者と死者』'58辺りから3、4作は入るのではないかと思います。『栄光』'26、『彼奴は顔役だ!』'39、『ハイ・シェラ』'41、『壮烈第七騎兵隊』'41、『いちごブロンド』'41、『大雷雨』'41、『死の谷』'49あたりに絞られるでしょうか。すごいぞ'41年のウォルシュ。しかし上記の作品は同等の水準で優れておりフォードやホークスの傑作群に劣らず、『リゼネレーション』『バグダッドの盗賊』『ビッグ・トレイル』はメルクマール的な価値から国定保存作品に指定されたという感じもします。無数の作品の中から『白熱』が選ばれたのはウォルシュ作品中もっともエキセントリックな映画だからでしょう。ウォルシュの映画は長編作品だけでも120本あまりに及びますから今回観る24作など1/6強という程度で、これまで観たウォルシュ作品も50本弱しかありませんが、先月ホークス作品27作観て満腹な状態ではウォルシュの映画は案外さらりと観られるのではないかと思います。映像ソフトを持っていないので今回は観直せなかった作品にも名作佳作がぞろぞろあるので、老後に入った今では少しずつ集めて観るのが楽しみです。
●11月1日(水)
『リゼネレーション(更生)』(The) Regeneration (フォックス'15)*72min, B/W with Color Tinted, Silent; 日本未公開/アメリカ国立フィルム登録簿登録作品(2000年度)
●11月2日(木)
『バグダッドの盗賊』The Thief of Bagdad (ユナイテッド・アーティスツ'24)*140min, B/W, Silent; 日本公開1925年(大正14年)1月/アメリカ国立フィルム登録簿登録作品(1996年度)
[ 解説 ] ダグラス・フェアーバンクス氏が「フォビン・フッド」の次に製作した大作で、アラビアン・ナイトの物語に基づいてエルトン・トーマス氏が原作を書き、ロッタ・ウッズ氏が脚色し「世界を敵として」「女は誓いぬ」等監督したラウール・ウォルシュ氏が招かれて監督の任にあたった。相手役は新進のジュランヌ・ジョンストン嬢、我が国の上山草人、南部邦彦両氏、コマント嬢(ペルシャ王子に扮す)、その他日独人のハーフで詩人のハートマン定吉氏、獰猛なノーブル・ジョンソン氏、中国人の女優アンナ・メイ・ウォン嬢等である。お伽噺式のファンタジーで、リアリズム全盛の米国映画界に大きな波紋を投げた大作品である。
[ あらすじ ] バグダッドの都の国王には美しい姫君(ジュランヌ・ジョンストン)があった。姫の婿君を選ぼうとした時、ペルシャ(ミス・コマント)、印度(ノーブル・ジョンソン)、蒙古(上山草人)の三王子が美々しい行列をもって乗り込んで来たが、はたして王宮に忍び入って、姫の美しさに魂を奪われたバグダッドの盗賊(ダグラス・フェアバンクス)も7つの島の王子と名乗って僅か一人の供を連れて入場する。砂占いから我が婿となる王子は初めに王庭のばらに触れるであろうと心をときめかせながら見ていると、バグダッドの盗賊の乗馬が蜂に刺されて狂い、彼はまっさかさまにばらの植え込みに投げ込まれ、かくて彼は姫と結婚すべき運命を与えられた。姫は彼の姿を一目見て、その雄々しい姿に深く心を動かされた。しかし彼の正体は見破られて姫の婿になる企みは失敗に帰した。姫は3人の王子達に一番珍しい宝物を7ヶ月目に持ってきた人を婿にすると一時逃れを言うので、3人の王子はそれぞれ宝物を捜しに出発する。バグダッドの盗賊も長老(チャールズ・ベッチャー)から教えられて宝物を捜す旅に出かけた。彼はあるいは死の谷で毒蛇を殺し、あるいは深海を捜り、あらゆる困難を経て身を隠す衣と魔法の小箱を手に入れる。ペルシャ王子は未来を見る水晶の珠を、印度王子は飛行のカーペットを、蒙古王子は軍隊をバグダッド城内に忍び込ませて一気に攻め落とし、王姫を我がものにしようとする。白馬に跨ってバグダッドに取って返した盗賊は小箱のうちより雲霞の如き大軍を出して蒙古王に攻め取られた王城の危急を救い、遂に姫君を妻とする幸福な身となった。
●11月3日(金)
『ビッグ・トレイル』The Big Trail (フォックス'30)*122min, B/W, Widescreen (107min, Standard); 日本公開1931年(昭和6年)3月/アメリカ国立フィルム登録簿登録作品(2006年度)
[ 解説 ] 「藪睨みの世界」「巴里よいとこ」に次いでラウール・ウォルシュが監督したフォックス超特作映画で、脚本はウォルシュ自身がハル・エヴァーツと協同で書き卸ろし「ハッピイ・デイス」「老番人」のルシエン・アンドリオが撮影した。主役は無名の新人ジョン・ウェインと「巴里見るべし」のマーゲリット・チャーチルが抜擢され、「巴里よいとこ」「ハッピイ・デイス」のエル・ブレンデルを始め「泥人形」「快走王」のタリー・マーシャル、「足音」のタイロン・パワー、「浮気発散」「空中サーカス」のデイヴィッド・ローリンスのほか「恋の大分水嶺」のアイアン・キース、「トム・ソーヤーの冒険」のチャールズ・スティーヴンス、ウィリアム・モング、フレデリック・バートン等が出演している。
[ あらすじ ] 西部開拓の雄図を抱いて大幌馬車隊がミズリー河畔から出発の途に上ろうとする時だった。ルース・キャメロン(マーゲリット・チャーチル)は、弟のデーヴ(デイヴィッド・ローリンス)と幼い妹を連れてこの一行に加わることになった。南部の上流社会に育った彼女達は父に死別して寄辺ない身の、運命開拓を西部の地に志したのである。幼い時から西部の野にインディアンや野獣を友として育ったブレック・コールマン(ジョン・ウェイン)もまた親友の仇敵を探すべく一行に加わった。ルースは最初粗暴な野人としてのブレックに反感を抱いたが、次第にその男らしさにひきつけられて行った。ブレックの仇敵はレッド・フラック(タイロン・パワー)という一行中名うての乱暴者だったが、ブレックが自分を付け狙っていることを知り、いくどか彼を殺さんと企んで、時にはブレックの友ジーク(タリー・マーシャル)の助けにより、時にはブレックの勇気により事々に失敗した。一行が前進するに従って、あらゆる困難が、前途に待ち受けていた。インディアンの襲撃、大河の激流、絶壁、暴風、吹雪。けれど一行はあらゆるものを征服し、希望の土地オレゴンへ進んで行った。ある者は死し、ある者は産まれ、最後の難関スネーク河も遂に征服された。凶悪なフラックも悪運尽きて、ブレックの刃に倒された。かくて春に甦ったオレゴンにルースとブレックは相抱いた。新しい世界はここに開拓されたのである。
●11月1日(水)
『リゼネレーション(更生)』(The) Regeneration (フォックス'15)*72min, B/W with Color Tinted, Silent; 日本未公開/アメリカ国立フィルム登録簿登録作品(2000年度)



●11月2日(木)
『バグダッドの盗賊』The Thief of Bagdad (ユナイテッド・アーティスツ'24)*140min, B/W, Silent; 日本公開1925年(大正14年)1月/アメリカ国立フィルム登録簿登録作品(1996年度)


[ 解説 ] ダグラス・フェアーバンクス氏が「フォビン・フッド」の次に製作した大作で、アラビアン・ナイトの物語に基づいてエルトン・トーマス氏が原作を書き、ロッタ・ウッズ氏が脚色し「世界を敵として」「女は誓いぬ」等監督したラウール・ウォルシュ氏が招かれて監督の任にあたった。相手役は新進のジュランヌ・ジョンストン嬢、我が国の上山草人、南部邦彦両氏、コマント嬢(ペルシャ王子に扮す)、その他日独人のハーフで詩人のハートマン定吉氏、獰猛なノーブル・ジョンソン氏、中国人の女優アンナ・メイ・ウォン嬢等である。お伽噺式のファンタジーで、リアリズム全盛の米国映画界に大きな波紋を投げた大作品である。
[ あらすじ ] バグダッドの都の国王には美しい姫君(ジュランヌ・ジョンストン)があった。姫の婿君を選ぼうとした時、ペルシャ(ミス・コマント)、印度(ノーブル・ジョンソン)、蒙古(上山草人)の三王子が美々しい行列をもって乗り込んで来たが、はたして王宮に忍び入って、姫の美しさに魂を奪われたバグダッドの盗賊(ダグラス・フェアバンクス)も7つの島の王子と名乗って僅か一人の供を連れて入場する。砂占いから我が婿となる王子は初めに王庭のばらに触れるであろうと心をときめかせながら見ていると、バグダッドの盗賊の乗馬が蜂に刺されて狂い、彼はまっさかさまにばらの植え込みに投げ込まれ、かくて彼は姫と結婚すべき運命を与えられた。姫は彼の姿を一目見て、その雄々しい姿に深く心を動かされた。しかし彼の正体は見破られて姫の婿になる企みは失敗に帰した。姫は3人の王子達に一番珍しい宝物を7ヶ月目に持ってきた人を婿にすると一時逃れを言うので、3人の王子はそれぞれ宝物を捜しに出発する。バグダッドの盗賊も長老(チャールズ・ベッチャー)から教えられて宝物を捜す旅に出かけた。彼はあるいは死の谷で毒蛇を殺し、あるいは深海を捜り、あらゆる困難を経て身を隠す衣と魔法の小箱を手に入れる。ペルシャ王子は未来を見る水晶の珠を、印度王子は飛行のカーペットを、蒙古王子は軍隊をバグダッド城内に忍び込ませて一気に攻め落とし、王姫を我がものにしようとする。白馬に跨ってバグダッドに取って返した盗賊は小箱のうちより雲霞の如き大軍を出して蒙古王に攻め取られた王城の危急を救い、遂に姫君を妻とする幸福な身となった。

●11月3日(金)
『ビッグ・トレイル』The Big Trail (フォックス'30)*122min, B/W, Widescreen (107min, Standard); 日本公開1931年(昭和6年)3月/アメリカ国立フィルム登録簿登録作品(2006年度)


[ 解説 ] 「藪睨みの世界」「巴里よいとこ」に次いでラウール・ウォルシュが監督したフォックス超特作映画で、脚本はウォルシュ自身がハル・エヴァーツと協同で書き卸ろし「ハッピイ・デイス」「老番人」のルシエン・アンドリオが撮影した。主役は無名の新人ジョン・ウェインと「巴里見るべし」のマーゲリット・チャーチルが抜擢され、「巴里よいとこ」「ハッピイ・デイス」のエル・ブレンデルを始め「泥人形」「快走王」のタリー・マーシャル、「足音」のタイロン・パワー、「浮気発散」「空中サーカス」のデイヴィッド・ローリンスのほか「恋の大分水嶺」のアイアン・キース、「トム・ソーヤーの冒険」のチャールズ・スティーヴンス、ウィリアム・モング、フレデリック・バートン等が出演している。
[ あらすじ ] 西部開拓の雄図を抱いて大幌馬車隊がミズリー河畔から出発の途に上ろうとする時だった。ルース・キャメロン(マーゲリット・チャーチル)は、弟のデーヴ(デイヴィッド・ローリンス)と幼い妹を連れてこの一行に加わることになった。南部の上流社会に育った彼女達は父に死別して寄辺ない身の、運命開拓を西部の地に志したのである。幼い時から西部の野にインディアンや野獣を友として育ったブレック・コールマン(ジョン・ウェイン)もまた親友の仇敵を探すべく一行に加わった。ルースは最初粗暴な野人としてのブレックに反感を抱いたが、次第にその男らしさにひきつけられて行った。ブレックの仇敵はレッド・フラック(タイロン・パワー)という一行中名うての乱暴者だったが、ブレックが自分を付け狙っていることを知り、いくどか彼を殺さんと企んで、時にはブレックの友ジーク(タリー・マーシャル)の助けにより、時にはブレックの勇気により事々に失敗した。一行が前進するに従って、あらゆる困難が、前途に待ち受けていた。インディアンの襲撃、大河の激流、絶壁、暴風、吹雪。けれど一行はあらゆるものを征服し、希望の土地オレゴンへ進んで行った。ある者は死し、ある者は産まれ、最後の難関スネーク河も遂に征服された。凶悪なフラックも悪運尽きて、ブレックの刃に倒された。かくて春に甦ったオレゴンにルースとブレックは相抱いた。新しい世界はここに開拓されたのである。

