人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

エルモ・ホープ Elmo Hope - デェ・ダア De-Dah (Celebrity, 1962)

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エルモ・ホープ Elmo Hope - デェ・ダア De-Dah (Elmo Hope) (Celebrity, 1962) : https://youtu.be/CPkK8c-BN0Y - 4:27
Recorded in New York, 1961
Released by Celebrity Records as the album "Here's Hope !", Celebrity 209, 1962
[ Personnel ]
Elmo Hope - piano, Paul Chambers - bass, Philly Joe Jones - drums

 エルモ・ホープは'53年にはブルー・ノート・レコーズの期待の進出ピアニストでした。ブルー・ノートからの第1作『Elmo Hope Trio - New Faces-New Sounds』はレコード番号BLP5029でBLP5030はトリオに加えて当時レギュラー・バンドだったというルー・ドナルドソン(アルトサックス)とクリフォード・ブラウン(トランペット)のクインテットで、'54年ライヴ録音のアート・ブレイキークインテットの『バードランドの夜』はブルー・ノート側の企画でブレイキーをドラムス、ピアノにホレス・シルヴァー、ベースにチャーリー・パーカーのバンド出身のカーリー・ラッセルを組ませてドナルドソン=ブラウン・クインテットからホープ、ヒース、フィリー・ジョーを外してドナルドソン=ブラウン・クインテットを乗っ取ったアルバムであり、その後ブルー・ノートは埋め合わせのように『New Faces-New Sounds, Elmo Hope Quintet, Vol,2』'54を製作しますがブルー・ノートでのホープのアルバムはこれが最後で、ホープはプレスティッジ、リヴァーサイド他ニューヨークのインディー・レーベルからの単発作品をほそぼそと作り、ロサンゼルスでもほそぼそとインディー・レーベルを渡り歩き、ニューヨーク復帰後もさらに弱小レーベルにほそぼそと売りこみを続けることになります。ジャズ史に残る『バードランドの夜』はホープを外してホレス・シルヴァー、フィリー・ジョーを外してブレイキーが乗っ取ったドナルドソン=ブラウン・クインテットのアルバムだったので、確かにあのアルバムはシルヴァーとブレイキーが仕切って名盤になったものですが、シルヴァーとブレイキーとドナルドソンはこのアルバムでブルー・ノートのスター・ミュージシャンになるので早い話この時点でブルー・ノートはホープを切ったも同然でした。パーシー・ヒースディジー・ガレスピーチャーリー・パーカーのサイドマン時代に組んでいたジョン・ルイスミルト・ジャクソンのモダン・ジャズ・カルテット(MJQ)に参加していましたし、奔放な性格でブルー・ノートでは問題児とされていたフィリー・ジョーは'55年にマイルス・デイヴィスクインテットのドラマーに抜擢されます。クリフォード・ブラウンマックス・ローチとの双頭リーダー・バンドに引き抜かれ'56年の交通事故死までジャズ史上最高のトランペット奏者の名声を今日にも不動にするので、出世もしなければ一流ジャズマンとしても記憶されなかったエルモ・ホープはいわば落ちこぼれのジャズ・ピアニストでした。
 しかしホープにはホープにしかないオリジナル曲と不器用転じて他のジャズ・ピアノにはない味わいがあり、筆者はCDの2in1版『High Hope ! / Here's Hope !』が愛聴盤で宝物ですが、20年前に当時結婚していた妻はまるでジャズには興味はなくアルバムの聴き分けなども全然できない女性でしたが、ホープのこのアルバムだけは「またそれ聴いているのね」と聴け分けがついて、それ以外のジャズ・ピアノのアルバムはバド・パウエルセロニアス・モンクソニー・クラークビル・エヴァンスも全部一緒に聴こえるのにエルモ・ホープだけは他のジャズ・ピアノとの違いがわかる、というのが本当にあったわけです。ホープのジャズは、あるいはそこがジャズとしては二流なのかもしれませんが、なかなかのセンスのオリジナル曲なのにやろうとして実現できていない表現のもどかしさ、手練れたジャズマンなら巧みにこなしてしまう演奏がどこか一歩手前でとどまってしまう器量の小ささがあり、筆者の前妻は世界一かっこいいロックバンドはローリング・ストーンズ、渋いバンドならヤードバーズとバッファー・スプリングフィールド、'70年代のバンドではスティーリー・ダンが好きでロック3大名曲は「いとしのレイラ」「天国への階段」「ホテル・カリフォルニア」とごく普通の英米ロックのリスナーでしたが、それでもホープの演奏は他のジャズ・ピアノとちょっと違うと判別していたのは面白い意見でした。なおこの曲「デェ・ダア」の初レコーディングはホープのデビュー作『Elmo Hope Trio - New Faces-New Sounds』'53(BLP5029)からレコード番号もすぐ次(BLP5030)に、ホープが参加していたルー・ドナルドソンクリフォード・ブラウンクインテットのアルバムで演奏されています。

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ルー・ドナルドソン / クリフォード・ブラウン Lou Donaldson / Clifford Brown - De-Dah (Blue Note, 1953) : https://youtu.be/2L85u2GxgWA - 4:53
Recorded at WOR Studios, New York City, June 9, 1953
Released by Blue Note Records as the 10-inch album "Lou Donaldson/Clifford Brown - New Faces-New Sounds", BLP 5030, 1953
[ Personnel ]
Clifford Brown - trumpet, Lou Donaldson - alto saxophone, Elmo Hope - piano, Percy Heath - bass, Philly Joe Jones - drums