人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

セロニアス・モンク Thelonious Monk Quartet - ミステリオーソ Mirterioso (Riverside, 1958)

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セロニアス・モンク・カルテット Thelonious Monk Quartet - ミステリオーソ Mirterioso (Thelonious Monk) (Riverside, 1958) : https://youtu.be/XqdR5s2BK98 - 10:49
Recorded live at The Five Spot Cafe, New York City, August 7, 1958
Released by Riverside Records as the album "Mirterioso", RLP 12-279, 1958
[ Thelonious Monk Quartet ]
Thelonious Monk - piano, Johnny Griffin - tenor saxophone, Ahmed Abdul Malik - bass, Roy Haynes - drums

 セロニアス・モンクほどのジャズマンになると人気の高いアルバムが多数ありますが、ことライヴ・アルバムについて言えば前年ジャズ・メッセンジャーズのアルバムにモンクがゲスト参加した時に初共演したジョニー・グリフィンをテナーサックスに、ドラムスにチャーリー・パーカークインテットスタン・ゲッツ・カルテットのロイ・ヘインズを迎えた1958年夏のジャズクラブ、ファイヴ・スポット・カフェでのカルテット編成の3か月公演から、8月7日公演をLP2枚に分割収録した『Thelonious In Action』'58と『Mirterioso』'58の2作が群を抜いて高い人気を誇るのではないでしょうか。モンクは'51年に仲間の隠していた麻薬所持の冤罪で逮捕されて黙秘したため、3年前にもジャズマン集団逮捕で30日間服役した前科もあって2か月間の服役を課せられ、音楽家組合からの商業施設出演許可証(通称「キャバレー・カード」)を没収されてしまいます。当時まだ売れないジャズマンだったモンクは数少ないレコーディングで糊口をしのぎながら約6年間の潜伏期間を乗り切り、'55年にはモンクの才能を高く買ったリヴァーサイド・レコーズに移籍して力作を次々と発表し、'57年にはようやくキャバレー・カードを再交付されてマイルス・デイヴィスのバンドを一時クビになっていたジョン・コルトレーン(テナーサックス)を迎えたカルテット編成で夏にファイヴ・スポット・カフェに出演、これがモンクが初めて人気を博すきっかけになり通常2週間の契約が3か月間に延長されます。コルトレーンはマイルスのバンドに呼び戻されましたが、翌年夏も行われたファイヴ・スポット公演も当初から好評で、リヴァーサイドは7月9日にテスト録音を行い、8月7日に2枚のアルバムになる本番録音を行いました。CDでは7月9日のテスト録音分も追加収録され、元のアルバムには未収録のレパートリーも演奏されているので、ベスト盤さながらに選曲もさらに充実しています。
 モンクは'47年~'52年にブルー・ノート・レコーズに6回のセッションでSP盤(78prmシングル)用に録音した楽曲が32曲あり、うち9曲がスタンダードや他のメンバーの提供曲ですがブルー・ノート録音だけで23曲のオリジナル曲があり、'52年~'54年のプレスティッジ・レコーズ時代には6回のセッション(うち1回ずつソニー・ロリンズマイルス・デイヴィスのアルバムへの参加)では26曲、うち8曲がスタンダードでミルト・ジャクソンマイルス・デイヴィスの曲が1曲ずつありますから、プレスティッジでは新曲16曲のオリジナル曲が録音されています。リヴァーサイドでは最初の2枚のアルバムはデューク・エリントン曲集、スタンダード曲集のピアノ・トリオ作品でモンクのピアニストとしての認知を図り、以降はアルバム毎に新曲2曲+旧レパートリーの新ヴァージョン(ブルー・ノートやプレスティッジの'52年録音までは1曲が3分強という制約があったので、リヴァーサイドではLP向けに5分~10分の演奏時間を生かした新ヴァージョンを作る意義がありました)という制作スタイルを採りました。この「ミステリオーソ」は人気が高い曲の割にカヴァー頻度が少ないのは、単純な12小節ブルース曲なのにテーマ・メロディーだけでも実際に演奏してみるととても難しく、またアドリブ中に倍テンポになったり戻ったりと自由度が高すぎるのが解釈の困難度を上げており、日本のジャズ・スポットでもっともジャム・セッション頻度の高いモンク曲は「ストレート・ノー・チェイサー」で、モンク曲は混乱を招きやすいので「ブルー・モンク」はおろか「エピストロフィー」や「ウェル・ユー・ニードント」「エヴィデンス」などはまず演奏されません。少なくとも昔は「ミステリオーソ」やりましょうなどと言うと顰蹙を買う曲だったので、意欲的なアマチュア奏者の方はぜひお試しください。ちなみに筆者はモンク曲ばかりやりたがるアマチュア・アルト奏者(自分のバンド仲間たちも)だったので、この辺の曲への愛着は深いで、ぜひエリック・ドルフィーに発掘ライヴなりともやってもらいたかった曲でもあります。

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Thelonious Monk Quartet - Mirterioso (Blue Note, 1951/1956) : https://youtu.be/mXvAus0U9iI - 3:23
Recorded in New YorK City, July 2, 1948
Released by Blue Note Records as the album "Genius of Modern Music: Volume 1", BNLP 5002(10-inch album), 1951 and BLP-1510(12-inch album), 1956
[ Thelonious Monk Quartet ]
Thelonious Monk - piano, Milt Jackson - vibraphone, John Simmons - bass, Shadow Wilson - drums