人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

マイルス・デイヴィス Miles Davis - ラウンド・ミッドナイト 'Round Midnight (Columbia, 1957)

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マイルス・デイヴィス Miles Davis - ラウンド・ミッドナイト 'Round Midnight (Thelonious Monk, Bernie Hanighen, Cootie Williams) (Columbia, 1957) : https://youtu.be/GIgLt7LAZF0 - 5:58
Recorded at Columbia Studio D, New York, October 26, 1955
Released by Columbia Records as the album "'Round About Midnight" as Columbia CL-949, March 6, 1957
[ Miles Davis Quintet ]
Miles Davis - trumpet, John Coltrane - tenor saxophone, Red Garland - piano, Paul Chambers - bass, Philly Joe Jones - drums

 この辺になると聴き飽きたを通りこして何十年も聴き返していない人も多いのではないでしょうか。セロニアス・モンクのこの曲をアルバム・タイトル曲にしてメジャー・デビューし一気にジャズ界の頂点に立ったのがこのアルバムのマイルス・デイヴィスで、アルバム・タイトル曲で冒頭曲のこのヴァージョンでマイルスは師匠のチャーリー・パーカー逝去後のモダン・ジャズ最高のスター・ミュージシャンになりました。'55年10月に録音されながらアルバムの追加録音が翌年分まで持ち越し、発売が'57年3月になったのはマイルスにインディー・レーベルのプレスティッジとの契約期間('51年~)が残っていたからで、プレスティッジ時代にもマイルスはソニー・ロリンズ(テナーサックス)がレギュラー・メンバー時にチャーリー・パーカーをゲストに迎えたスタジオ録音がありましたが、10インチ・アルバムで発表予定だったこの録音は出来映えやパーカーのヴァーヴとの契約(パーカーは「チャーリー・チャン」名義での匿名参加でした)との兼ね合いで発売が保留され、結局パーカーの'55年3月の急逝後さらに翌年になって12インチ・アルバムで発売されました。パーカーはいつものアルトサックスではなくテナーサックスで参加しています。

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Miles Davis - 'Round About Midnight (Prestige, 1956) : https://youtu.be/COw0fe7OBqc - 7:12
Recorded at WOR Studios, New York City, January 30, 1953
Released by Prestige Records as the album "Collector's Item", Prestige PRLP 7044, December 1956
[ Personnel ]
Miles Davis - trumpet, Sonny Rollins - tenor saxophone, Charlie Parker ("Charlie Chan") - tenor saxophone, Walter Bishop Jr. - piano, Percy Heath - bass, Philly Joe Jones - drums

 マイルスは'55年にジョン・コルトレーンレッド・ガーランドポール・チェンバースフィリー・ジョー・ジョーンズの新クインテットを結成して俄然注目を集めるようになりましたが、'55年のニューポート・ジャズ・フェスティヴァルではセロニアス・モンクとともにフィーチャーされたジャム・セッションでモンクと同曲を共演、この時の反響がメジャー最大手のコロンビアからの契約勧誘になったと言われます。その時の「ラウンド・ミッドナイト」の伝説的共演は、ジャム・セッションと言ってもほとんどトランペットとピアノのデュオのようなものだったのがマイルス没後に発表されたライヴ音源で明らかになりました。

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Miles Davis and Thelonious Monk - 'Round Midnight (Columbia/Legacy, 2005) : https://youtu.be/qZ2HGyKSZyc - 6:00
Recorded live at New Port Jazz Festival, July 17, 1955
Released by as the reissued album "'Round About Midnight 2005 anniversary edition" Bonus Disc, Columbia Legacy COL 519957 2, June 14, 2005
[ Personnel ]
Miles Davis - trumpet, Thelonious Monk - piano with Zoot Sims - tenor saxophone, Gerry Mulligan - baritone saxophone, Percy Heath - bass, Connie Kay - drums

 マイルスは'56年にアルバム4枚分の録音をプレスティッジに済ませて契約を満了し、'56年10月の最終セッションでは1年前にコロンビアに録音したのと同一アレンジでプレスティッジにも同曲を残しており、コロンビアの録音の際にテーマ後にテナーサックス・ソロ前のブリッジが追加されるようになって、以降はそれを踏襲していたのがわかります。このブリッジは『クールの誕生』'49-'50セッションで知遇を得たアレンジャーのギル・エヴァンスのアイディア(ノンクレジット)とされ、あまりに特徴的なので他のジャズマンがこの曲を演奏する場合は用いられないのが普通です。マイルスのクインテットコルトレーンの独立以降数回のメンバー・チェンジを経て'60年代後半はウェイン・ショーターハービー・ハンコックロン・カーター、トニー・ウィリアムズのレギュラー・メンバーに定着しますが、その時期のライヴでは1ステージ・ノンストップのメドレー形式で原曲のメロディーも和声・コード進行も限界まで崩した演奏がされており、テレビ放映用に撮影されたライヴ映像が長年海賊版で出回っていましたが、近年ようやくオフィシャル化されて鮮明な映像で観られるようになりました。例のブリッジもやってはいるものの、ショーター、ハンコックらがブルー・ノートの自己名義のアルバムでやっていた'60年代ポスト・バップ・スタイルのフリー・ジャズとの境界線上の「ラウンド・ミッドナイト」が聴けます。

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Miles Davis Quintet - 'Round Midnight (Columbia/Legacy, 2011) : https://youtu.be/hwFrxKhp8a8 - 8:31
Recorded Broadcasting live at Konserthuset, Stockholm, Sweden, 31 Oct. 1967
Released by Sony Music Entertainment, Columbia Records, Legacy Recordings as 3CD+1DVD Box Set "Live in Europe 1967: The Bootleg Series Vol. 1", Columbia Legacy 88697 94053 2, September 20, 2011
[ Miles Davis Quintet ]
Miles Davis - trumpet, Wayne Shorter - tenor saxophone, Herbie Hancock - piano, Ron Carter - bass, Tony Williams - drums