人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

フィル・ウッズ Phil Woods - アライヴ・アンド・ウェル Alive And Well (Pathe, 1968)

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フィル・ウッズ&ヨーロピアン・リズム・マシーン Phil Woods And His European Rhythm Machine - アライヴ・アンド・ウェル Alive And Well (Phil Woods) (Pathe, 1968) : https://youtu.be/PrdPE_1pSi0 - 3:35 (Track 2)
Recorded at the Studios Pathe-Marconi, November 14 & 15, 1968
Released by Disques Pathe as the album "Alive And Well In Paris", ‎SPTX 340.844 T, 1968
[ Personnel ]
Phil Woods - alto saxophone, George Gruntz - piano, Henri Texier - bass, Daniel Humair - drums

 マサチューセッツ生まれの白人アルトサックス奏者フィル・ウッズ(1931-2015)の渡仏してパリを本拠に結成したレギュラー・バンド、ヨーロピアン・リズム・マシーンとの第1作アルバムはウッズのオリジナル3曲にエディ・ハリスのジャズ・ロック曲のヒット曲「Freedom Jazz Dance」のカヴァー、オリヴァー・ネルソンの名曲「Stolen Moments」のカヴァー、ソニー・ロリンズの「Doxy」と選曲も良い名盤ですが、「Doxy」はアルバムのクロージング扱いの1分半の短い演奏ですし、「Freedom Jazz Dance」というとマイルス・デイヴィス'60年代の最強クインテットによるアルバム『Miles Smiles』'67での激烈カヴァー、「Stolen Moments」は作者ネルソンが当時新レーベルのインパルス!に残した名盤『The Blues And The Abstract Truth』'61(F・ハバードtp、E・ドルフィーas、ネルソンts、G・バーロウbs、B・エヴァンスp、P・チェンバースb、R・ヘインズdsのスーパー・セプテット!)のヴァージョンがやはりマストで、ウッズの本作での「Freedom Jazz Dance」「Stolen Moments」はアルトのワンホーン・カルテットなら最高のヴァージョンですが編成の異なるマイルス、ネルソンのヴァージョンはやはりその編成ならではの曲の生かし方で極上になっている。マイルス・クインテットの煮えたぎるような一体感、ネルソン版のスペシャル・オールスターズでドルフィーのぶっ飛んだソロに全員が感化されるもただ一人白人のビル・エヴァンスが本調子が出ずエヴァンスらしかぬムラのある演奏ぶりのところまで面白くも味わい深く、この両曲はウッズ版の好演をもってしても決定ヴァージョンはマイルスやネルソンにあるでしょう。
 ただしアルバム『Alive And Well』はアメリカのジャズ不況で活動が鈍っていたウッズ渾身の現役アピール作なので、アルバム冒頭のオリジナル新曲の名曲「若かりし日」と、それに続くウッズのオリジナル新曲「アライヴ・アンド・ウェル」で高らかに復帰宣言を告げたりあと、アルバムは「Freedom Jazz Dance」「Stolen Moments」でウッズの変わらぬ実力を見せつけ、「Doxy」で軽く締めるというトータルな構成でバランスの良い名盤になったとも言えます。「若かりし日」のような力作オリジナル曲ばかりで占めたアルバムだったら本作はこのアルバムの作風が由来するジョン・コルトレーン(1926-1967)のアルバムのように重苦しいものになっていたでしょう。「若かりし日」同様アルバム2曲目「アライヴ・アンド・ウェル」もコルトレーンのオリジナル曲の作風、コルトレーン・カルテットのアレンジに近いサウンドです。しかし14分あまりの「若かりし日」の次の「アライヴ・アンド・ウェル」はもっとも盛り上がった3分半程度にまとめ上げ、シャープに聴かせる点にウッズのセンスがあり、コルトレーンに感化されたサックス奏者の多くが音色やフレーズの破綻でコルトレーン的な切迫感、訴求力を表現していた時期に、そうした破綻なしにコルトレーン的な表現力に迫っています。ウッズはコルトレーンより5歳年少ですが晩成型で30歳まで注目されなかったコルトレーンよりデビューは早く、20代初めには新進気鋭のアルト奏者でした。そうした自負もこの完成度の高い演奏からは伝わってくる気がします。