人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

レニー・トリスターノ Lennie Tristano - レクイエム / ターキッシュ・マンボ Requiem / Turkish Mambo (Atlantic, 1956)

レニー・トリスターノ Lennie Tristano - レクイエム Requiem (Lennie Tristano) (Atlantic, 1956) : https://youtu.be/eYEl4EaCPJs - 4:53
Lennie Tristano - ターキッシュ・マンボ Turkish Mambo (Lennie Tristano) (Atlantic, 1956) : https://youtu.be/6oEiuUU6Ek4 - 3:41

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Recorded at Tristano's home studio, New York City, 1954-1955
Released by Atlantic Records as the album "Tristano", Atlantic 73712, February 1956
[ Personnel ]
Lennie Tristano - piano, Jeff Morton - drums (Turkish Mambo)

 この2曲はアルバム『鬼才トリスターノ』のスタジオ録音曲中でも文字通りトリスターノ自身のオリジナル曲で、ソロ・ピアノ曲「レクイエム」は盟友チャーリー・パーカー(アルトサックス、1920.8.29-1955.3.12)への追悼曲です。トリスターノはニューヨーク進出後1947年~1951年にパーカーと5セッション・20曲24テイクの共演が録音に残されており、特に1951年録音の2曲はパーカーとケニー・クラーク(ドラムス)がトリスターノの家に立ち寄った時にアルトサックスとピアノのデュオ録音をしたもので(ケニー・クラークがブラシで電話帳を使っていますが)、その1曲「オール・オブ・ミー」は前回ご紹介しました。トリスターノはパーカーの葬儀では棺を持つくらい親密な友人で、「レクイエム」はおごそかに始まってブルース演奏になる曲で、ブルースを追悼曲とするのもなかなかのセンスです(パーカーのレパートリーは1/3は循環コード、1/3はスタンダード、1/3はブルースでした)。また「ライン・アップ」の下地とした「オール・オブ・ミー」はトリスターノとしては比較的演奏頻度の少ないスタンダードでしたが、アルバムのA面1曲目がパーカーとのデュオ演奏とのニュアンスが強い「ライン・アップ」で、2曲目が「レクイエム」なのは実はトリスターノ自身にパーカー追悼を暗示する曲順の意図があったのが見えてくる。これはアルバム発表時にはおそらくほとんどのリスナーが気づかなかったでしょう。

 アルバム3曲目がソロ・ピアノ曲「ターキッシュ・マンボ」(ドラムスがリズム・ガイド程度にシンバルを刻みますが)なのもパーカーがスタンダードに混じってやっていたラテン・ジャズのトリスターノ流解釈で、この曲はなんとピアノが4重にダビングされています。まず5拍子、6拍子、7拍子のリフが次々と重なっていき、そのポリリズムに乗せてピアノ・インプロヴィゼーションが行われるという曲で、ミニマル・ミュージックとしても現代音楽に先駆けていれば、方法は生演奏の多重録音による人力テクノそのものです。それは延々同じスタンダード曲のコード進行だけのくり返しをベースとドラムスだけ先に録音しておいてピアノ・インプロヴィゼーションをダビングする手法のピアノ・トリオ曲にも言えることで、トリスターノのジャズが当時の常識からはいかにかけ離れていたかを極端に表しています。