人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

投資をイナゴにたとえたら

 今回は投資・および投資家をイナゴに喩えた経済現象をご紹介いたします。投資になどさっぱり興味がない私のような人間にも、こうした事例は資本主義下の社会・文化現象として大いに勉強になります。
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 イナゴ投資家、または単にイナゴと証券業界から呼ばれる一部の個人投資家たちは、テレビやネット、SNSの情報から素早く有価証券を売買をし、その回転売価によってタワー状の株価チャートを引き起こします。その株価急騰・急落の動きは激しく、このように急に現れて利食いをした後すぐ別の銘柄に当たる投資行動を、秋になると一斉に繁殖し稲穂を食い尽くすイナゴにたとえて、業界関係者らはイナゴ投資家、または失礼なことに、単にイナゴと呼びます。

 イナゴ投資家の取引は特定銘柄の株価の暴騰直後に一転して急落することが多く、こうした一連の値動きをチャートにすると暴騰と急落の動きがタワーのような形状をなすことからイナゴタワーと呼ばれています。イナゴタワーが形成されると結果的に暴騰前の価格を割り込む水準まで株価が落ち、しかも落ちた後の株価が暴騰前の水準まで戻るにもかなりの時間がかかる場合がたびたびあると言われます。

 イナゴ投資家は信用取引無限回転という信用取引規制緩和の影響で2013年1月から発生しました。イナゴ投資家とは短期で材料株の回転売買を繰り返す個人投資家であり、その規制緩和の影響で従来の大口の、個人投資家の中でもとりわけデイトレーダーと呼ばれる日中に売買の決済を行って利益を得ようとする投資家の売買動向が変化したことで登場した投資家の種類の一つであり、それ以前は1日に大手の取引制限が設けられていました。

 規制緩和が実施される以前は同じ資金では1日につき1回のみしか信用取引での新規買い(売り)ができなかったため、大きな値幅が取れる可能性のある仕手株や材料株などの銘柄を売買するのがデイトレーダーの主な投資行動でした。しかしこの規制緩和以来1日にごく僅かな利ザヤでも幾度も取引を重ねれば、大きな収益を期待できます。またその特性から保有時間を短くできるようになりリスクも大きく抑制できるため、短期で材料株の回転売買を繰り返すイナゴ投資家が増加しました。また2014年7月の東証主力株では最小0.1円単位まで値刻みが縮小されたのもイナゴ投資家に有利になり、ますます短期で回転売買を行う投資家が増加する一因となったのです。

 なお、このような規制緩和が実施される以前は、イナゴ投資家とは上述した意味とは異なり、年末の資金手当てを目的に、秋に株式の含み益を確定させる個人投資家らのことを指していたといいます。
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[ イナゴタワーのカースト形成 ]

 一説によると、イナゴタワー(前述)を形成するイナゴ投資家には、以下のような種類があるといいます。

●高速イナゴ :

 電光石火のようなスピードを持ち味とするイナゴ。銘柄に関する材料となる情報が出るやいなや内容の確認などはせず、とりあえず飛びついて取引を行います。他のイナゴが乗り遅れる銘柄の暴騰にいち早く間にあう点で強みがある一方、大した材料とならないような内容の情報も少なくないことから、結局のところ損切りで終わってしまう方が多いとされます。また、まれに「共食いイナゴ」(後述)に変化すると言われます。

●下級イナゴ :

 銘柄に関する情報が流れた際に、その情報を分析する能力を備えたイナゴ。しかしその分析能力は極めて低いため「凄そう」という程度の理由でも飛びつき取引してしまいます。情報分析に時間がかかる分だけ高速イナゴより乗り遅れることも多く、共食いイナゴの「エサ」になる場合も多いとされます。

●上級イナゴ :

 下級イナゴの変化系。情報精査に関する能力が格段にアップしており、無駄打ちが少ないのが特徴。あえて他のイナゴ達が荒らした後に入る戦略も多いものの、その分乗り遅れる場合も多いので「イナゴ心」を忘れてしまったイナゴとされています。

●養分イナゴ :

 他のイナゴのATM代わりに存在するイナゴ。株価の上昇が終わった銘柄に飛び乗り、皆にお金をばらまいています。自分が損した銘柄の情報提供者への怨恨は凄まじく、しばしば「煽りイナゴ」(後述)に進化します。

●煽りイナゴ :

 養分イナゴの変化系。ただお金をばらまくだけだったのが、執拗な買い煽りを繰り返し、皆を巻き込もうとする特殊能力が備わった迷惑極まりないイナゴです。

●共食いイナゴ :

 高速イナゴの進化系。誰よりも早く乗った銘柄を、遅れてきたイナゴに売りつける冷酷非情な「イナゴ殺し」のイナゴで、昨今ではこのタイプの台頭が凄まじく、高騰銘柄が長続きしない元凶にもなっています。別名「ババ抜きイナゴ」。

●殿様イナゴ :

 イナゴ界のレジェンド。特定の掲示板などで崇拝されているイナゴで、他のイナゴとは違い、あえて先に特定の銘柄を仕込み、その後ひたすら銘柄名を叫ぶことによってイナゴ達を飛びつかせる手法を取ります。叫んだ銘柄は必ず騰がるので負け知らずの名実ともに「最強イナゴ」です。

 これら各種の指向を持つ投資者によって「イナゴタワー」と呼ばれるカーストが形成されます。投資には一切興味がない方にも、こうした投資経済におけるカースト形成はちょっと滑稽で面白いものです。これではまるでさまざまな投資家たちの姿をイナゴの生態のように描いた株式コメディ・アニメみたいではありませんか。