ぼくが逮捕されて有無を言わさず多摩警察署の留置場にぶちこまれたのは2007年5月23日、横浜拘置所に押送されたのが8月1日だから、4年前の今ごろはまだ逮捕から2週間ほどで刑事の取り調べも始まっていない最悪の環境にあったことになる。自分が何の容疑で檻の中に入れられているのかも解らない。この状態がいつまで続くのかも判らない。食事以外何の楽しみもない。入浴も5日おきだ。運動時間と言っても形だけ。狭い中庭でタバコ2本喫ったらおしまい。
ぼくは離婚末期に躁鬱病の典型的な状態を呈していた。順序が逆だ。躁鬱病を発症したので妻に離婚された。そんな人間が直後に留置場にぶちこまれておかしくならない訳はない。ようやく落ちついて、現在の状況を理解し先のことを考えられるようになるまで何週間かかっただろう。それまでは統合失調様の幻覚と妄想に毎日苦しんでいた。
正気に反ったのは現実の方が幻覚よりも圧倒的だったからかもしれない。つまりぼくは逮捕からしばらくは現実を認めたくなかったのだ。何かの間違いですぐ釈放されると思っていた。ところが何度拘置延長同意書にサインしても一向に釈放の様子はない。
正気に戻る前のぼくは、父と義母と弟が面会に来てくれた時、自分の弟だと判らなかった。弟は一語も発しなかった。釈放後、弟は義母を通して「今後は一切の関係を絶つ」と伝えてよこした。ぼくは釈放後買い直すCDのことを考えた。
1.ザ・ビートルズ
2.ザ・ローリング・ストーンズ
3.ザ・ビーチ・ボーイズ
4.ボブ・ディラン
5.ジ・アニマルズ
6.ザ・キンクス
7.ザ・バーズ
8.ザ・ドアーズ
9.グレイトフル・デッド
10.トラフィック
もちろんまだアメリカン・ロックならラヴィン・スプーンフル、ザ・ヤング・ラスカルズ、ザ・サー・ダグラス・クインテット、ジェファーソン・エアプレイン、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ザ・バンド、オールマン・ブラザース・バンドを入れたいし、ブリティッシュ・ロックならザ・ヤードバーズ、クリーム、4大ハード・ロックバンドのレッド・ツェッペリン、ディープ・パープル、ブラック・サバス、ユーライア・ヒープ、5大ブログレッシヴ・ロックバンドのピンク・フロイド、キング・クリムゾン、イエス、ジェネシス、エマーソン・レイク＆パーマーも落とせない。また出直しだ。
