前回参考にしたのは「家族のためのパニック障害サポートブック」という良くできたパンフレット(患者から見ても納得)ですが、とりあえずパニック障害を克服できただけでも前進です。
躁鬱病を抱えているから完治ではなく、1～2か月に1度ほどはパニック発作が起こりますが、苦痛は仕方ないとして恐怖や不安はありません。
パニック障害がいちばん激しかった時には留置場～拘置所で4か月近く拘置されました。今考えてもたいへん危険な環境にあったんだな、と思います。これまで入院して、拘置所で発症した気の毒な人、数人から話を聞きました。通常告訴から逮捕され、裁判までは未決囚として3か月拘置所に収監されます。収監中に発症しても罪状には反映されず、治療も十分には受けられません。
拘置所の独居房に志願して移してもらった時、いちばん奥の部屋だったから刑務官に先導され独居房の囚人たちの個室を歩きながら横目で見ました。よほど長期化しているのかどの房も勝手に模様替えしていて(ソファーのある房までありました)これだけ部屋数があるのに深と静まり帰っていた。体の変型してしまった囚人も見ました。雑居房は嫌だったけど、自分から狂気の世界に来たのに気づいて冷たい汗が出ました。
心因性症状は留置場の最初の1か月は激しい幻覚になって出ました。躁鬱の症状(または監禁性障害)の中に(幻聴とは別に)「頭の中で音楽がリピートされて止まない」という例があるそうですが、ぼくも体験しました。The Doors'Break On Through(To The Other Side)'とJefferson Airplane'Somebody To Love'、ジャックス「からっぽの世界」(Jacks'Vacant World')の3曲。ドアーズやエアプレインの音楽を今では手放しで称賛できないのはそのせいもあります。
その時に精神症状を訴えても相手にされなかったでしょう。それが普通なのだから。
発作や幻覚は留置場から拘置所に移された頃には収まっていました。留置場からの押送なのでガラス棒の検査は受けずに済みました。留置場では70日間独房。拘置所では雑居房に40日間、独居房に7日間。周囲が職業的犯罪者なので、かえって心身は対向すべく屈強で健康だったと思います。
出所は、戦争に行って帰ってきた、そんな感じでした。
