人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ルパン三世vs 荒野の用心棒

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若松(孝二)プロ傘下の鬼才に大和屋竺という監督・脚本家がいます。代表作は「荒野のダッチワイフ」1968。これは謎の人妻誘拐事件に荒野を捜索する私立探偵の物語で、アッと驚く結末のどんでん返し、といってもネタバレにはならないでしょう。他の監督作品「裏切りの季節」「毛の生えた拳銃」「愛欲の罠」も同等の傑作。若松プロですからこれらはポルノ映画館で3本立てのポルノ映画として製作され上映されました(80年代半ばまでは「ポルノ映画館」というのが全国くまなく町外れにありました)が、アダルト・ヴィデオの普及がポルノ映画文化を一掃してしまったことは若松プロの映画や日活ロマンポルノの名作群を憧れて育った世代には日本映画界の大きな損失と感じます。

大和屋竺はアニメの名脚本家でもありました。ルパン三世第一シリーズ中の傑作はほとんど大和屋作品です。「時間旅行者・魔毛狂介」「魔術師と呼ばれた男」、さらに名作と名高い映画第一作「ルパン三世vs複製人間」など、共通するのは峰富士子(B99W66H88)に狂気の執着を抱くマッド・サイエンティストがルパンと戦って敗れる、という子供も見てるんだぞと苦情がくるような(あったそうです)陰惨な話ばかりということです。それを救っていたのが山田康雄でしょう。

さて、山田康雄吹替え(笑)の「荒野の用心棒」。西部劇の歴史ではマカロニ・ウェスタンの始祖とされる作品です。西部劇といっても一律ではありません。保安官ものもあれば人情劇もあり、戦争ものもある。「荒野の用心棒」1964は原作の黒沢明「用心棒」1961が禁酒法時代のマフィアの抗争を描いたダシール・ハメットのハードボイルド小説「血の収穫」1930を原案にしているようにギャング映画だったりもするわけです(ハメットの小説は現在では大衆小説ではなく文学作品としての評価を受けています)。
それにしても、「用心棒」「荒野の用心棒」共にこれまで何度も見たけれど、ほとんど構図やモンタージュまで同じ(笑)。「七人の侍」1954と「荒野の七人」1960だってどちらも面白く、「荒野の七人」は監督ジョン・スタージェス、主演ユル・ブリンナーで日本公開では年間No.1だったそうですが、細身なんですね、黒沢映画より。その点「荒野の用心棒」はパクりかたまで堂々としています。でも魅力の八割はクリント・イーストウッドだな(笑)。