人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

世界の10大映画(D・リチー選)

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サマーセット・モームに「世界の10大小説」という文学入門があるとはいえ、大それたタイトルだ。「世界の10大映画」、この世に映画が現れて以来どれほど多くの名作駄作が送り出されてきただろうか。
だがドナルド・リチー氏(1924-、以下敬称略)という日本通の映画研究家がいて、大胆にも世界の映画から傑作10本を選び、歴史的に映画表現の発達史を考察するという力業に挑んだ。それが1984キネマ旬報社初版、2006年スタジオ・ジブリ再刊の名著「映画のどこをどう読むか-世界の10本の傑作から 映画理解学入門」で、今回はその世界映画10選を紹介したい。なにしろ読んだのは27年前、今回はAmazonの商品案内で目次を調べて作品の確認をした。
さて、前置きはここまで。ほぼ年代順だがわかりやすく番号をふる。すべて20世紀の作品だから19**は略す。これが世界の10大映画('84当時選)です。

●1.戦艦ポチョムキン(ソ連'25)/セルゲイ・M・エイゼンシュテイン
●2.裁かるるジャンヌ(仏'28)/カール・Th・ドライヤー
●3.新学期・操行ゼロ(仏'33)/ジャン・ヴィゴ
●4.ゲームの規則(仏'39)/ジャン・ルノワール
●5.市民ケーン(米'40)/オーソン・ウェルズ
●6.忘れられた人々(メキシコ'50)/ルイス・ブニュエル
●7.東京物語(松竹'53)/小津安二郎
●8.抵抗(死刑囚は逃げた)(仏'56)/ロベール・ブレッソン
●9.情事(イタリア'60)/ミケランジェロ・アントニオーニ
●10.バリー・リンドン(米'75)/スタンリー・キューブリック

すごい。鉄壁のラインナップという他ない。
「あのー先生、私見たことない映画ばかりなんですけど」
「タイトルくらい知っている映画はないかな?」
東京物語…(戦艦ポチョムキン市民ケーン、と自信なげな声があがる)」
「それでは監督は?」
小津安二郎スタンリー・キューブリック…(オーソン・ウェルズジャン・ルノワール…)」
せいぜいその程度だろう。「3本選んで映画史的な位置づけと表現技法の特色を述べなさい」無理だろうな。ホームヴィデオやケーブル・テレビの普及以前は古典映画を見ようとするとたいへんな手間が必要だった。手軽に見られる今の方がかえって疎遠とは皮肉だ。