人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

『アイ・シャル・ビー・~』

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原題'I Shall Be Released'。これはボブ・ディラン本人(「グレイテスト・ヒッツVol.2」1971・写真上)よりもザ・バンドのヴァージョン(「ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク」1968・ジャケットもディラン画・写真中)で知られているかもしれない。いや、確実にそうだ。発売年のとおり、これはディランが自分のバック・バンドのホークス改めザ・バンドの独立デビューに提供したうちの1曲で、前記ディラン版はベスト盤用おまけ録音だ。1991年にもなって発掘アルバム「ブートレッグ・シリーズ1-3」(写真下)で当時のデモ・テープが発表され、さすがの出来だったがもう遅い。ザ・バンドは映画にもなった解散記念の「ラスト・ワルツ」1976コンサートでもこの曲をゲストたち(ディラン、クラプトンを筆頭に)と歌って締めくくった。その10年後、この曲で素晴らしいリード・ヴォーカルを聞かせたリチャード・マニュエルはザ・バンド再結成ツアー中にモーテルで縊死した。まだ42歳だった。

『アイ・シャル・ビー・リリースト』

すべては置きかえがきくと人は言う
そしてどんな距離も近くはない
だからおれは思い出すことができる
おれをここに押し込んだやつらの顔を
おれには光が輝くのが見える
西から東に向かって
もうまもなく、もうまもなく
おれは、解き放たれるだろう。

だれもが助けが必要だと人は言う
倒れないやつはいないと人は言う
だけどおれはこの高い壁の向こうにいる
おれの姿がはっきりと見える
おれには光が輝くのが見える
西から東に向かって
もうまもなく、もうまもなく
おれは、解き放たれるだろう。

孤独な群衆のなかでおれの隣にいるのは
自分は無実だと叫んでいる男だ
おれには一日中そいつの叫びが聞こえた
自分ははめられたんだと叫ぶ声が
おれには光が輝くのが見える
西から東に向かって
もうまもなく、もうまもなく
おれは、解き放たれるだろう。
(前記アルバムより)

この曲はゴスペルとの関連がよく指摘される。ザ・バンド自体がゴスペルの影響が強い異色のロック・バンドだった。バンド独立を指す「解放」がバンド解散の「解放」になり、死という解放になる。ただの囚人の歌ではないのだ。