原題'Knockin' On Heaven's Door'、アルバム「
ビリー・ザ・キッド」'Pat Garrett And Billy The Kid'1973収録。初期~中期にかけての
ボブ・ディラン(1941-)の曲のうち、バラッド(
叙事詩、物語歌)に属すものは本当に長い。8行1連で平気で8連~12連あったりする。そんなディランだが意外や最短の曲に屈指のヒット曲があって、それがこれになる。ディランはオートバイ事故から復旧後もアルバム制作は低調で(セールスは良かったが)、ライブ活動も
ジョージ・ハリスン主催「
バングラ・ディシュ」コンサートや
ザ・バンド「
ロック・オブ・エイジズ」コンサートへのゲスト参加程度になり、そうこうしているうちに30歳を迎えて映画出演の話が降ってわいた。異端の
ウェスタン監督
サム・ペキンパーの「
ビリー・ザ・キッド21歳の生涯」(原題'Pat Garrett And Billy The Kid'1973)、原題の通り保安官と無法者の悲劇的な友情話で、保安官は
ジェームズ・コバーン、無法者は
クリス・クリストファーソン。ディランは立って事態を見ているだけの役。前記サントラ盤も歌入りは4曲だけで、しかも独立した曲はこの1曲しかない。だがそれが70年代ばかりか全年代でもっとも人気が高く、
テレヴィジョンから
ガンズ・アンド・ローゼズまでカヴァーするロック・クラシックになったのだった。
『天国への扉』
ママ、おれのバッジを外してくれ
もうおれにはそれは使えないから
だんだん暗くなり、おれには見えないくらい暗くなってきた
まるでおれは天国への扉を叩いているみたいだ
叩け、叩け、叩け天国への扉を
叩け、叩け、叩け天国への扉を
ママ、おれの拳銃を地面に置いてくれ
もうおれにはそれは撃てないから
ながく黒い雲がたれこめてくる
まるでおれは天国への扉を叩いているみたいだ
叩け、叩け、叩け天国への扉を
叩け、叩け、叩け天国への扉を
(前記アルバムより)
この曲の場合は、平易さと短さがカヴァーにうってつけとも言える。コード進行もシンプルで(もともとディランに凝ったコード進行はないが、とりわけ)、ディラン自身なら『見張塔からずっと』、
ニール・ヤング『ヘルプレス』の系列。ディランとしては薄味かもしれない。