人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

ベティ・アーマン' アスファルト'

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実にいい感じだ。図版3点並べてみただけで大都会を舞台にした(大戦間ベルリン)純情な青年とアバズレ美女(ベティ・アーマン/Betty Amann,1905-1990)の悲恋が浮かび上がってくる。90分の映画だがテンポがいいので短く感じる。
ついこないだからYouTubeサイレント映画満載なのに気づき、一気に映画熱が再燃した。毎日未見の作品を見ても20年はかかるのだ。なんと贅沢な。
そこで立て続けに謎の作品ばかり取り上げたが、今回はちょっと違う。大メジャー作品です。当時世界的な大ヒット作になったドイツの犯罪メロドラマで、映画辞典の基礎文献「日本映画発達史」(昭和51年・田中純一郎)にも作品の概略とその背景・反響について触れられている。

アスファルト Asphalt ベルリンの女賊と若い警官の交渉を扱ったもので、女賊に扮した女優ベティ・アマンの官能的魅力が評判となった。(昭和5・1・30、浅草松竹座)

昭和3年からアメリカで導入されたトーキーは当初音響がひどく、騒音に近い音の氾濫が不評を買った。そこでトーキー後進国のヨーロッバのサイレント映画がかえって人気を博し、その代表が「アスファルト」、になるらしい。
もうひとつの基礎文献「映画作品辞典」(昭和29年・筈見恒夫)の作品紹介はもっと詳しい。

アスファルト'Asphalt'(独.ウファ.1929)大都会の雑踏の中で万引女がつかまる。若い警官は護送の途中、遂に女の魅力に抗しきれない-「カルメン」の現代版ともいうべきメロドラマを、主役ベティ・アーマンの肉感的魅力とヨオエ・マイの老巧な演出の冴えで見せて、サイレント末期に圧倒的な当りをとった。

実は万引女どころか窃盗団のボスの情婦という峰不二子みたいな女なのだが、真面目な交通警官(当時は電気式信号がないので中央分離帯に警官が立って信号になるのだ)がたまたま宝石店で万引きした女を見破る。嘘と色仕掛けで逮捕を免れるが女の身(ウソ)を心配して見舞いにくる純情警官に女も惹かれていってしまうのだ。ついに結婚の申込みをされて「警官と泥棒なんて無理よ」「きみは泥棒じゃないよ」「これでも!?」と隠し戸からジュエリーをぶちまけ「これでも!?」と壁戸棚から山ほどドレスをぶちまける女。

この後急展開になるがネタバレはやめておこう。いいなあ犯罪メロドラマ。