アンガー作品はほぼ3つの系統に分けられるだろう。まず第1に耽美と退廃・フェテシズム的な作品。
○花火'Fireworks'1947(16ミリ・15分・B/W=上)
○プース・モーメント'Puce Moment'1949(16ミリ・6分・カラー)
○ラビッツ・ムーン'Rabbit's Moon'1950/1979(35ミリ・16分・B/W)
○人工の水'Eaux d'artifice'1953(16ミリ・13分・B/W)
○快楽殿の創造'Inauguration Of The Presure Dome'1954(16ミリ・38分・カラー=中)
までがそれにあたる。初期から中期にかけての作品群だ。男色とSM、両性具有的エロティシズムをモチーフにした作品群となる。
アンガーの飛躍は男色とヴァイオレンスを描いた中期以降の作品にあり、黒魔術への関心も高まる。
○スコピオ・ライジング'Scorpio Rising'1964(16ミリ・28分・カラー=下)
○カスタム・カー・コマンド'Kustom Kar Kommandos'1965(16ミリ・3分・カラー)
○わが悪魔の兄弟の呪文'Invocation Of My Demon Brother'1969(16ミリ・11分・カラー)
特に「スコピオ~」は画期的な傑作となった。「イージー・ライダー」をはじめ影響は大きく、アメリカの病巣を保守派の狂気に求める「わが悪魔の~」などはおぞましいばかりの衝撃的傑作で、アンガー映画はこの時期に、おそらく本人の意図しない仕上がりで成功をおさめた。
その後のアンガー作品は黒魔術を主題にして、成功したとは言えないものになっている。だがそれがアンガー映画の帰決なら仕方ないことでもある。
○ルシファー・ライジング'Lucifer Rising'1981(16ミリ・28分・カラー)
○'The Man We Want To Hang'2002(16ミリ・14分・カラー)
これらの集大成がKenneth Anger「The Complete Magick Lantern Cycle」で、戦後アメリカ実験映画の金字塔といえる。見るべき人に届いてほしい映画だと思うのだ。