人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

アルゼンチンの70年代ロック

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

 ロックは歴史も浅い流行音楽なので、60年代~70年代にはわずか数年~10数年の蓄積しかない若いジャンルだった。近代文化が確立した国家にはほとんどロックは進出した。共産圏では60年代末まで禁止されていが、70年代になると国家公認ミュージシャンに限りロックが解禁されるようになった(もちろん地下活動を行っているロック・バンドもたくさんあった)。国家による取り締まり下の音楽というのが、たかだか20数年前まで行われていたというのはやはり大したものだろう。

 アルゼンチンといえば日本のちょうど裏側、タンゴか「コンドルは飛んでいく」のロス・インカスくらいしか思い浮かばないのが普通だった。ようやくアルゼンチンの70年代ロックが輸入盤で入ってきて、クルチス、ミアなどイタリアのロックに近い抒情・情熱・ダイナミズムで「ああ、文化大国なんだなあ」とブエノスアイレスには足を向けて寝られなくなった(でも真裏なのでどの角度で寝ても足が向く)のだった。それから日本には20グループあまりが紹介されたが、つい最近まで廃盤で聴けないバンドが多かった。そのうち半数ほどがこの数年のうちにCD再発されたのだ。しかも300~400円台!掲載アルバムは、
○アラス「アラス」1976(画像1)
○ラ・マキナ・デ・ハカー・パジャロス「ペリキュラス」1977(画像2)
○ブブ「アナベラス」1978(画像3)

 アラスのジャケットは初期エアロスミスのロゴのパクリかもしれないが、スペイン語でAlasは飛翔との意らしいのでバンド名には合っている。15分・17分の大作2曲(+シングル曲2曲)で、ジャズ・ロック的ピアノとプログレ的オルガンが絡みあう快作。

 ラ・マキナは南米ロックきっての才人チャーリー・ガルシアのバンド。第一作とこの第二作は甲乙つけがたい、アルゼンチン屈指の名盤として名高い。1曲4~5分で美しいメロディと優しいヴォーカル、シンセサイザーとストリングスのアンサンブルが絶品。翌年ガルシアはアラスのメンバーと合流しセル・ギレンを結成、更なる洗練を目指す。

 ブラジルのバカマルテと並んで「南米のキング・クリムゾン」と定評があるのがブブ。サックス、フルート、ヴァイオリンが19分、11分、9分の大作の中で混声合唱と共に暴れまくる。アルゼンチンでは異色だが、そこはロックですからこれもありです。