人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

明治の詩・その他のエッセイ2

○コメントと断片より

(1)蒲原有明(1876-1952)の場合、当時の医学水準とはいえ受診データもありませんので推測になりますが、躁鬱とはいかないまでも循環気質を推測させます。26歳で第一詩集を刊行してから5年間で第四詩集「有明集」に達しています。明治・大正期の詩集は長編小説並みに大部で、現在の平均的な詩集の5倍以上のヴォリュームがありました。その多作な時期に女性関係も乱れていたわけです。鎮静化してからは15年後に第五詩集を追加した全詩集「有明詩集」を刊行、次に20年沈黙し、敗戦後に長編の自伝的小説「夢は呼び交わす」刊行、と周期の長い人でした。引遁以後はほとんど家から出なかったというから、その原因となった躁状態はよほど本人の心の傷になったと思われます。有明はブランク以来、再刊や文庫版が出るたびに旧作を改作したことでも知られます。興味がおありであれば、ネット通販の古書で「日本詩人全集」の類には蒲原有明の巻が必ずあります。有明の場合明治の詩人でやや難しいので、註釈が詳しい「日本の詩歌」(中央公論社、文庫版もあり)の第2巻がおすすめです。長編自伝小説「夢は呼び交わす」も岩波文庫に入っています。

(2)今年の夏はそれほどでも、と思って過ごしていましたが、オフィスで34度・湿度85パーセントじゃまるでパン生地の発酵室並みですね。ナマモノも腐る暑さ。うちは冷房ありませんが、風を通せば屋外より10度は涼しく過ごせたのでまさか地域によっては室温34度の猛暑とは想像していませんでした。あと数週です。なんとか乗りきってらしてください。

(3)いつもありがとう。2010年代でも現代詩は立中・氷見あたりからそれほど変化していない(というか、立中・氷見は最終的に時代より進んだ達成を成し遂げたし、今世紀に入ってかえって保守的な中堅詩人たちが幅をきかすようになった)。もう110年も前の蒲原有明、伊良子清白ら明治の詩人の方が大胆で繊細だった(有明に興味があれば渋沢孝輔蒲原有明論」をお薦めする。優れた詩人による、優れた詩人の真剣で愛情に満ちた長編批評。図書館にあるかな?)。有明に天才を感じた、というのはそこまで断言する自信がなかったのだけれど、言われてみればこれほどの日本語の奇跡はない。今後も過去・最近の詩人を取り上げるので、率直な感想お待ちしています。