人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

鈴木清順「殺しの烙印」日活'67

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日活1967年・B/Wワイド91分。監督を中心とした8人の集団制作(具流八郎名義の)オリジナル脚本。主演=宍戸錠、真理アンヌ、小川万里子。鈴木清順監督の36作目にして経営陣の怒りを買い解雇されるばかりか過去の作品のレンタル禁止措置まで招いた問題作。社会主義国家ならともかく民主主義国家では表向き聞いたことがない(干される、というのはある。やはり日活の神代辰巳監督はデビュー作から第二作まで5年あまり干され、山口清一郎監督も危険視されて事実上飼い殺しにされた)。では「殺しの烙印」とはどんな映画か?

基本的なアイディアは若松孝二門下の大和屋竺(あつし・1937-1993。子息の曉は「金色のガッシュ!」「銀魂」の脚本監督)によるものらしい。大和屋自身の若松プロ監督作「裏切りの季節」1966(ジャックスが曲名を拝借)、「荒野のダッチワイフ」1967と三部作をなすといってよい「殺し屋対殺し屋」もので、No.3にランクされる殺し屋(宍戸錠)が依頼遂行の間にNo.4、No.2の同業者を倒す。だが重要な依頼に失敗し、仲介者の女を誘拐され、No.1との対決を前に妻(小川万里子)を撃ち殺した主人公は果てのない籠城戦で次第に消耗していく。やがてNo.1が挑発に自ら現れ、去った後に女を拷問死させるフィルムと遺骨が届き、主人公の錯乱は頂点に達する。そして主人公は指定された深夜のボクシング・ジムへ自分こそがNo.1になるべくして向かう。そこで主人公を待ち受けていたものは…。

大和屋竺はのちに「ルパン三世」第一シリーズの主要脚本家になった人(「ガンバの冒険」も)で、元々この「殺し屋」三部作が「ルパン三世」のヒントになったという説もある。「依頼をしくじった(秘密を知った)殺し屋が殺し屋に狙われる」という設定は日常ではまったくリアリティを持たないものだが、作品の中でリアリティを持てば映画は成立する。その面では、時空間が歪みながら進行する「裏切りの季節」「荒野のダッチワイフ」は更に過激な映画だった(独立プロのピンク映画なので制作は低予算をきわめ、難解さについて野暮な苦情もなかった。情交シーンが一定の割合にあればどんなな映画でも許される、というピンク映画の黄金時代があり、やがて日活ロマンポルノが成人映画を洗練させる)。

あえて薦めないが金字塔。国際的評価は最高。そういう映画もあるのだ。