人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(12c)チャールズ・ミンガス(b)

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

 さてミンガスのアルバムは、作風を確立した1954年から逝去する1979年までの25年間でざっと50枚はある(正規録音のみ)。ミンガスより早熟で長命だったマイルスは正規録音では95枚ほどだから、録音数はほぼ同格になる。
 マイルスが前後編なのは順当として、パーカーやロリンズを差し置きミンガスを前中後編にするのか、とさすがに少しは気が引けるが、実は最初の回だけで全体像は書いた。でも語り足りないので別の観点(ビッグ・バンド)から書いたのが前回で、今回は更に別の観点から書きたい。作曲家としてのミンガス、といったところだ。

 先にマイルスとアルバム数の比較をしたが、おそらくマイルスのオリジナル曲は100曲に届かないだろう。一方ミンガスのアルバムはほとんどオリジナル曲で固めている(再演も多いが)。200曲には満たないにしても100曲を超えるのは確かだ。だがセロニアス・モンクは数こそ50曲程度だが、その半数はモダン・ジャズのスタンダードになっている。パーカーもそうだ。初心者からヴェテランまでパーカーやモンクの曲を演奏することで腕を磨く。
 ミンガスの曲は魅力的なのだが、ミンガス自身のヴァージョンが決定的すぎてアレンジの余地がなく、プレイヤーにとっては聴き惚れはするが、演奏意欲はそそられない。モンクのピアノ奏法同様、ミンガスの曲と音楽は独自の完結性が強すぎるのだ。

 だがその魅力といったら、ミンガスを聴いている間はジャズはミンガスだけでいい、と思うほどのインパクトがある。匹敵するのはジョン・コルトレーンくらいだろう(この二人は面識もないのに嫌いあっていた。それでいて天才エリック・ドルフィーを競って起用した)。
 既に代表作に上げた「直立猿人」1956の表題曲、更に次作「道化師」1957(画像1)の必殺曲「ハイチ人の戦いの歌」の躍動感はビ・バップとは別の手法からモダン・ジャズを発展させたものだ。後者などモダン・ジャズで最もかっこいい1曲だろう。
 そしてミンガスは大手コロンビアから名曲満載の傑作「ミンガス・アー・ウム」1959(画像2)で一躍全国区に躍り出る。
ミンガス真の絶頂期はドルフィー始め最高のメンバーのライヴ盤「グレート・コンサート」1964(画像3)だろう。このツアーのために書き下ろされた難易度最高の超絶曲が並ぶ名盤。2枚組2時間6曲!これは普通のジャズじゃないぞ。