67年頃(クリーム、ジミ以前)までロックのアルバムは英米でまったく選曲やタイトル、ジャケットの異なる編集が平然と行われていた。この混乱は多作な人気バンドほど大きかった。
ローリング・ストーンズの場合も英米で内容が統一されたのは67年12月の「サタニック・マジェスティーズ」(ビートルズは同年6月の「ペパーズ」)からで、それまでビートルズは英8枚<米14枚、ストーンズは英6枚<米10枚と、米盤は水増しアルバムで枚数を稼いだといえる。
だが米盤は12曲に制限された代わりに音圧は高く、英ではシングル曲はアルバム未収録だが米盤はB面まで網羅した。なんと言っても国際的影響力を見るには米盤の選曲が欠かせない。市場規模が違う。
そこでストーンズ最初のベスト・アルバム「ビッグ・ヒッツ!(ハイ・タイド・アンド・グリーン・グラス)」の英盤(66.11・画像1)と米盤(66.3・画像2)を比較してみたい。先行発売の米盤を見よう。
1.サティスファクション/2.ザ・ラスト・タイム/3.アズ・ティアーズ・ゴー・バイ/4.タイム・イズ・オン・マイ・サイド゛/5.イッツ・オール・オーヴァー・ナウ/6.テル・ミー/7.19回目の神経衰弱/8.ハート・オブ・ストーン/9.一人ぼっちの世界/10.ノット・フェイド・アウェイ/11.グッド・タイムス・バッド・タイムス/12.プレイ・ウィズ・ファイア
この12曲から6,11,12の3曲を落とし、
1.マザー・イン・ザ・シャドウ/2.黒くぬれ!/7.カム・オン/12.レディー・ジェーン/14.リトル・レッド・ルースター
の5曲を増補したのが14曲入りの英盤。3月の米盤と11月の英盤の間にシングル1,2と12を含むアルバム「アフターマス」が出ている(英66.4/米66.6)。一見英盤の方が強力に見える。バンドの真意も英盤にあり、米盤4,8(英盤共通)・英盤12以外の11曲は英盤ではアルバム初収録だった。2曲少ない米盤は不利に見える。
だが不思議なもので、曲順も良く統一感も優れるのは米盤の方なのだ。これは英盤1,2,12を生んだ「アフターマス」セッションからストーンズが新しい段階に入ったことを示す。これらは名曲なのだが浮いている。
だが薦めるとなると選曲では英盤に分がある。幸か不幸か英盤は現在は廃盤になっている。