Gerry Mulligan(1927-1996,baritone sax,piano)。
チェット・ベイカーは甘いハンサムでソフトなプレイにも中性的魅力があり、マリガン・カルテットの成功でたちまちガレスピー、マイルスを抜くジャズ誌の人気No.1トランペッターにになった。1年半も在籍せずに独立していったのは無理もない。チェットの脱退は大きな痛手だった。
しかもマリガンは54年の前半に3か月を獄中で過ごしている。出所後の仕事はパリ公演から始めた。おそらく組合の規定からしばらく国内での演奏活動に制限あったと思われる。ボブ・ブルックマイヤー(ヴァルヴ・トロンボーン)、白人ベーシストNo.1のレッド・ミッチェル(ベース)、フランク・アイソラ(ドラムス)のカルテットでのライヴが'Playel Concert'(画像4)'Paris Concert'などのフランス原盤で発売された。
帰国後マリガンは初代ドラマーのチコ・ハミルトンを呼び戻し、ミッチェルは続投、トランペットには新人ジョン・アードレィを迎えて新カルテットの活動を始めた。'California Concerts Vol.1'54(画像1)'Vol.2'54がそれで、ミッチェルのオリジナルもいいがスタンダード'Little Girl Blue''Darn that Dream''Makin' Whoopie'、パーカー曲'Yardbird Suite'などもいい。ただしマリガンはアードレィの力量からズート・シムズ(テナー)、ブルックマイヤーを加え、カルテット以外にセクステットも試している。
その結果マリガンはこのセクステットを正式にレギュラー・グループに決めた。レーベルもインディーズのパシフィックからメジャーのエマーシーに移籍し、'Presenting Gerry Mulligan Sextet'55(画像2)'Mainstream of Jazz'56(画像3)を録音する。前者は全8曲でスタンダード中心、後者は全6曲でオリジナル中心の選曲。'California Concerts'同様選曲はスタンダード、オリジナルとも初代カルテットのベスト・ヒットとも言えるが、そこは辣腕アレンジャーでもあるマリガンだけあって初演ヴァージョンからさらに厚みを増した、軽やかでいてどこかドスの効いたサウンドが堪能できる。