人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(46g)グラント・グリーン(el-g)

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Grant Green(1935-1979,electric guitar)。
前作からサイドマン参加作3作を挟んだリーダー作'Idle Moments'63.11(画像1)はこれまでとはムードを一新した作品になった。グリーンの持ち味は暖かみ、寛ぎ、好ましい朴訥さ、楽しさだったが、ここではいつになくシリアスなのだ。当時ブルーノートは従来のハード・バッブからソウル・ジャズ路線と先鋭的な「新主流派」路線の二枚看板への転換があり、グリーンはどちらでも行けるギタリストとして重宝されていた。サイドマン参加作はほとんどソウル・ジャズのオルガン奏者のアルバムだった。本人のアルバムはハード・バッブとソウル・ジャズの中間路線で、前作が特色の薄い作品だったためか、ここで思い切って新主流派路線の作品が企画された。実質的にプロデュースを任されたのはピアノのデューク・ピアソンで、タイトル曲とライナー・ノーツも手掛けている。

このアルバムは4曲しかないが、タイトル曲は15分、オリジナルが2曲、MJQの『ジャンゴ』と聴き応えのある構成で、グリーン作の'Jean De Fleur',ピアソン作'Nomad'も秀逸(第2作「グリーン・ストリート」にも'Green With Envy'という名曲があった)。新主流派を代表するジョー・ヘンダーソン(テナー)、ボビー・ハッチャーソン(ヴィブラフォン)の参加も価値を高める。最高傑作にあげる人も多い。だがグリーン本来の資質とは違うのではないか。

サイドマン3作を挟んで録音された'Solid'64.6(画像2)はまたもや没アルバムになった。ヘンダーソン、J・スポルディング(アルト)、さらにコルトレーン・カルテットからM・タイナー(ピアノ)、E・ジョーンズという最強の布陣で、前作以上にグリーン踏んばる。だんだん無理をしてきた。

次作'Talkin' About!'64.9(画像3)は編成をオルガン入りトリオに戻した。ドラムスはジョーンズ。ラリー・ヤング(1940-1978)はオルガンのコルトレーンと呼ばれた人で、冒頭のスリリングな'Talkin' About J.C.'は12分でフェイドアウトする熱演。なのに無機的な印象も残る。グリーンにとっては自然な成長とは思えない挑発性を感じる。