人生は野菜スープ~usamimi hawkrose diary

元雑誌フリーライター。勝手気儘に音楽、映画、現代詩、自炊などについて書いています。

(46h)グラント・グリーン(el-g)

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Grant Green(1935-1979,electric guitar)。
前回の「トーキン・アバウト」に始まり、グリーンとラリー・ヤング(オルガン)の共演はブルーノートに4作あるが、前作は時流に乗った成功作と評価されたのだろう。64~65年のコルトレーンはマイルスをも凌ぐ革新的カリスマで、「クレッセント」「至上の愛」「カルテット・プレイズ」「アセンション」と一作ごとにジャズ界の台風の目になっていた。ドラムスのエルヴィン・ジョーンズはカルテットの心臓ともいえ、エルヴィンが叩くとコルトレーン・カルテットの音になるのは当然だった。
前作に続く3枚もグリーンとヤング、エルヴィンが基本メンバーで、そこに4人目のメンバーが加わる。

まずラリー・ヤングのリーダー作として、
Larry Young'Into Somethin''64.11.12(画像1)
-があり、テナーの怪人サム・リヴァースが加わる。ユゼフ・ラティーフを思わせるぶっ飛びテナーだが、着地点の見えないプレイが好みを分ける。アルバム全編は好調で、冒頭の'Tyrone'から冴えている。

次作'Street Of Dreams'64.11.16(画像2)はわずか4日後の録音で、「アイドル・モーメンツ」でも共演したヴィブラフォンのボビー・ハッチャーソンを迎えた。これが異様なアルバムで、ビーチ・ボーイズの「フレンズ」68を連想させるゆるゆるの演奏。全4曲スタンダードで33分40秒しかない。精鋭揃いでこの緩さは、意図的としか思えない。タイトル曲と'Lazy Afternoon'の気だるさは頽廃的なニュアンスではないだけに異常。筆者は「アイドル・モーメンツ」よりよっぽど好きだが、よく没アルバムにしなかったものだと感心する。

サイドマン2作を挟みお次はテナーのハンク・モブレーを迎え、なんと'I Want To Hold Your Hand'65.3(画像3)と来た。ジャケットのモデルが別れた女房に似てる。絶対会社企画だろうが、ビートルズの『抱きしめたい』を'Corcovado'とともにボサ・ノヴァ編曲でやっている。他の大半はスタンダードだがモブレー、グリーン、ヤング、エルヴィンの面子でいきなりポップス路線というのは面食らう。グリーン本人はこの時期、何を演りたかったのだろうか?